今回は一休み、ブッダはブッダでもBUDDHA BRANDの話をしたい。去る6月25日、渋谷のVISIONというクラブで、5月に急逝したBUDDHA BRANDのリーダーDEV LARGE(D.L a.k.a. DJ BOBO JAMES)の追悼イベント「D.L PRESENTS HUSTLERS CONVENTION NIGHT」が開催された。
22時オープンにあわせて10分前に道玄坂に着くとそこにはすでに300人ほどの列が。前後の人と会話を交わしながら並ぶこと約1時間、その頃には入場待ちの列は1000人に及び、入場規制がかかったそうだが、何とか入ることができた。
BUDDHA BRANDは日本語ラップの先駆けのグループ。そのリーダーの追悼とあって、ジャパニーズラッパーが勢揃いした。ライムスター宇多丸氏の「いま、日本のHIPHOPはココ(ステージの足下を指して)にあるんだよ!」のMC通り、スチャダラパーが、ニトロが、キングギドラが、雷が、入れ替わり立ち替わり代表曲ばかりオンパレードで朝までマイクリレーを交わし、フロアは異常な盛り上がりを見せた。
4時半に会場を出ると、そこにはまだ入りきれない200人ほどの列が。この歴史的瞬間を一目見ようと全国からヘッズ達が集まってきている姿はまさに鳥肌モノだった。
Back to THE 90’s、話は僕の高校時代にさかのぼる。
子供の頃からレタリングされた文字が好きだった僕は、中学に入った時にはグラフィティ(当時はそんな言葉知らなかった)まがいのものをノートの端々に描いたりしていた。
高校に入ったばかりの1997年、机に描いていたそれがクラスのリーダー格の女子達に見つかり、「何?タギングできんの?アタシのカバンに書いてよ」と言われてひどく狼狽えたのを覚えている。根暗系だった僕はまさかそんなギャルになんか接点が無いと思っていたからだ。放課後、そいつが机の上に置きっぱなしにしていたのが、前年に発売されていたBUDDHA BRANDの「人間発電所」だった。
第一印象は、すげーあやしい感じ。当時好んで聴いていたメジャーシーンのロックとは異質のアングラ感。ジャケ写の格好からしてヘン、胡散臭いなのだ。そのくせに何?グループ名が仏陀ブランド?仏教の質下げるなよ…と思って、CDを借りたものの聞かなかった記憶がある。
再熱したのはそれから1年後ぐらいだったか。それまでにラップは聞くようになっていたが、どれも金、ドラッグ、ギャングの抗争の歌詞ばかりで辟易していた中、日本語ラップの面白さを教えてくれたのはMUROさんとBUDDHA BRANDだった。ろれつのリズムが抜群に良くて、耳に残って離れず、つい口ずさんでしまう。中毒性が高い。
寺の坊主のよう
スネアドラムス 木魚
お経のBuddha style ライムフロウfrom 人間発電所
このBuddhaとShakkaは
南無 大神拝みなされ
喝!from 大怪我
それまでヘンでダサいと思っていた格好が、どんどん格好良く見えてきた。奇抜でダサいと思っていたスタイルが、自分でも真似してみたいお手本スタイルになってきた。
サイプレス上野MC「ごちゃまぜでHIPHOPなんだって教えてもらった」@6/25, VISION
仏教かくあるべし、みたいな無自覚にあった固定観念を最初にブッ飛ばしてくれたのがBUDDHA BRANDで、温故知新の大切さを教えてくれたのがサンプリングだったのだ。
10代の頃、好きなアーティストの歌詞や発言が心の支えになったり、そのアーティストがオススメしていたCDを探して買ってみるとか、そういう多感な時期に影響を受けたことって、多くの人が思い当たるんじゃないか。そしてその頃の彼らの至言はずっと胸の内で熱源になっていて、今でもその曲が流れたなら、あの頃の初期衝動のワクワク感が甦るのだ。
ライブでの開口一番、オーサカ=モノレールの中田亮氏が、「DEV LARGEは〝No Fear(怖れがない)〟だった。」といった。「自分よりでっかいものにぶち当たっても、かんけーねーみたいな。俺はやるって決めたらやるんだ、みたいな。決して口数が多いワケじゃなかったと思うんですけど、その姿勢が、皆に勇気を与えてたんだと思います。やればできる、みたいな」と語った。
僕は、怖れがなかったとは思わない。ただし怖れには飲み込まれないというか、それすらも原動力に変えてしまうバイタリティーのようなものが感じられて、惹かれてきたんだと思う。怖れより克己心が上回ってきて、探求・追求心が勝るときに、珠玉の音楽が紡がれたんだろうなぁと想像する。
普通じゃない刺激求め
お先見えぬ保証がないスリル満点の人生
ヒップホップ人生form CHECKMATES
You need a hard to play this game
気持ちがレイムじゃ
モノホンプレイヤーになれねえfrom人間発電所
きっと、D.Lの言うとおりなのだ。気持ちがレイム(中途半端)じゃあモノホンプレイヤーになれない。この夜、全員で大合唱したこのフレーズと、会場のものすごい熱気と爆音を、忘れることはないだろう。やる時にはやんなきゃダメだって事。氏の言葉は幾度となく、そしてこれからも僕の背中を押してくれるに違いないのだ。
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