少数民族の機能美・シンプルさに刺激されたYumtsoの服|earth garden “春” 2019 出店者

「旅をする中で出会ったネパールとタイの少数民族の手仕事に感動したんです。手間をかけて作り込まれた刺繍の技術。身近な自然を利用し、原料作りから始める丁寧な染めの技術。大量生産大量消費を前提にした服では実現できない技術と工夫を凝らした服…」

earth garden “春”には、アースガーデンの選りすぐりの出店者さんが揃います。
今年の出店者であるYumtsoの藤崎さんに話を聞きました。

Yumtso

小さい頃からものづくりが好きだった藤崎さん。会社員として経験を積んだのち、本格的にものづくりに挑もうと、スクールに通い、レザーの加工や服のパターン、デザインなどを学びました。2003年ごろから、徐々に自身の作品を買ってくれる人が増えていき、2006年にオリジナルブランド「Yumtso(ユムツォ)」としての服作りをスタート。

「旅をする中で出会ったネパールとタイの少数民族の手仕事に感動したんです。手間をかけて作り込まれた刺繍の技術。身近な自然を利用し、原料作りから始める丁寧な染めの技術。大量生産大量消費を前提にした服では実現できない技術と工夫を凝らした服に、見れば見るほど惚れ込み、現地の職人たちと一緒に服をつくっていくことにしました」

特に影響を受けたのは、その機能美だといいます

「彼らの服は、とても機能性が高いんです。簡単な構造なのに便利で美しい。例えば1枚の布を身体に巻き付けてるタイプの服であれば、巻き方ひとつで身体の大小に対応できるんです。一般的な洋服は、一人ひとりに合わせるために複数のサイズが必要です。私は身体が小さいので、洋服のサイズに苦労してきました。だからこそ強く衝撃を受けたのだと思います」

これに強い刺激を受けた藤崎さんは、予め大きめ・長めにデザインをして、紐や布を結ぶことで幅や丈を調節できるなど、少数民族の服からインスピレーションを受けた機能美をデザインに取り入れています。

“一息”ついて考え始めた、ちょうどいい暮らし

少数民族の服作りと藤崎さんのセンスを組み合わせたYumtsoの洋服は、次第にファンを広げていきました。卸もスタートさせ、順調に拡大していくブランド。しかし、藤崎さんの心には違和感が生まれていったと言います。

「卸を伸ばしていこうとすると、卸のためにたくさん商品をつくらないといけません。納品するための服作りのようになってきてしまい、少しずつ自分と洋服作りの間に距離が生まれてしまいました。その頃にちょうど子どもが生まれて、洋服作りから2〜3年ほど遠ざかりました。自分自身の気持ちと向き合い、最近は自分の作りたい洋服を作ればいいんじゃないかと、ちょっとリラックスして取り組めるようになりました」

そもそも少数民族のシンプルな暮らしに感動してスタートしたブランド。日本で仕事として取り組む中で様々なものに影響を受け、紆余曲折したけれど、今、藤崎さんは原点に戻ってきました。

新商品である、ラオス古布を使った座布団

「Yumtsoを始めた頃に作った服を改めて見てみたら、今でも自分が着たいって思えるんです。もちろん、年齢が上がった分、変わってきた感覚もあります。変化を素直に受け入れつつ、自分の原点に立ち戻り、再スタートです」

少数民族との出会いは、Yumtsoの服作りだけでなく、藤崎さんのライフスタイルにも影響を与えています。

「タイもネパールも経済は発展しています。現地の人々の生活は変わってきていますが、日本に比べたらとてもシンプルです。生活と自然が密着。インフラが乏しいので、工夫といい意味での諦めを大切に暮らしを営む。私も現地に行けばすぐにそんな生活に慣れますし、日本での生活にもっと取り入れたいと思います。ただ、やっぱり難しい。日本には日本の生活があり、現地には現地の生活がありますから。でも、こういった疑問を持つことには意味があるはず。自分や家族にとって、本当にいい環境はどうあるべきなのか、これからも考え続けていくのだと思います」

アースデイ東京には、様々な出会いがあります。自分自身の生き方は、これで良いのかと迷ってしまうかもしれません。でも、それでいいのだと思います。理想を100%叶えた生活ができている人はきっと多くない。でも、アースデイには理想を追うことを諦めず、考え続けている人々が多く集います。藤崎さんもその一人。Yumtsoのブースで服を見ながら、自分の生き方について思いを馳せてみるのはいかがでしょうか?

earth garden “春” 2019