TOSHI-LOWと島キクジロウが語る「311のあと、価値観が変わってなければ負けだと思う」

311以後、いち早く行動を開始したTOSHI-LOW。48歳で弁護士になったロックンローヤー島キクジロウ。二人から感じるのは怒り。そして、未来への行動力。思うがままに行動し、突き進んできた二人の言葉は強い。その強さの土台には人のことを思う真っ白な優しい心がある。

311のあと、価値観が変わってなければ負けだと思う
TOSHI-LOW×島キクジロウ

TOSHI-LOW「いやぁ、まさか島さんが40歳過ぎて弁護士になっちゃうなんて思わなかったな。弁護士には見えないな。」

「そうかな?(笑)もちろんね、音楽をやれれば、それだけですごくハッピーなんだよ。でも、もっともっと生きたいんだよね、もっと。その手段をもう一つ音楽以外にも持ちたいって思ったんだ。今は下北沢の開発とか、ダム建設の差止めの弁護団なんかもやってる。」

TOSHI-LOW「今のほうがいい顔してる。」

「ありがとう。TOSHI-LOWのバンド活動はどう? BRAHMAN があるのに、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND もこの間のアルバムぐらいからグッと良くなってきたよね。主催するNew Acoustic Camp も、もうすぐだね。」

TOSHI-LOW「そうだね。俺さ、日本でフェスが始まった頃のあの空気が好きだったんだよね。昔はお客の方も覚悟が必要だった。それが、だんだん小学校の遠足みたいなフェスが多くなってきたんだよね。歩く場所が決められていたり、これをやっちゃだめ、あれをやっちゃだめ。不自由なことがどんどん増えていく。そうじゃなくて、もっと自由にやりたい。自然の中でのキャンプを中心に質の高い音楽がある空間を作りたいんだよね。New Acoustic Campはそういう場にしたい。」

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「当然、今年は311を反映したものになるよね?」

TOSHI-LOW「絶対、影響してくるね。311でいわゆる”豊かな生活”が全部崩れ去って、人間は自然には勝てないっていう当たり前なことを改めて教わった。今回、バンドのメンバーもオフィスのスタッフも全員で震災直後に被災地を回ったんだ。瓦礫が360度を囲み、自衛隊が生存者を探しているような時だよ。もう、見ることしか出来なかった。

だからさ、自然と共存するために、自然と遊んで、自然を学ぶってことが今とても大事だと思う。そこに、生き抜いていくための根底があるはず。特に子どもは入場フリーにしてるから、遊びに来て自然と向き合ってほしいな。」

「形は去年と同じだけど、重要度が違ってくるだろうね。大事にしなきゃいけないことこそが自然の中にあるっていうを思い知らされた。」

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TOSHI-LOW「311前はさ、漠然と大事なことだと思いつつも、ないがしろにしていた自分もいたんだよね。シャワー出しっぱなしにしたりとかさ。でも、311が起きてしまった今、生活や価値観が変わらなかったら負けだよ。福島の放射能垂れ流しの姿を見て、津波の被災地の瓦礫の山を見て、それでも昔の価値観にしがみついてる場合じゃねえだろうって思う。」

「そういうものから利益を得ている人の数は想像以上に多いからね。」

TOSHI-LOW「家族が原発で働いていれば、反対なんて言えない。福島の人が意外なほどに何も言わないのはそういうことだよね。難しいけど、でも、もっと福島の人が声をあげなきゃいけない。現地の人が声を出さなきゃ、結局何も変わらない。」

「一つ残念だと思うのは、戦後の日本において、おかしいことへの行動から、市民が変革を起こした歴史がないんだよね。だから今回何かしらの成果をあげるっていうが今後の日本の民主主義にとってとても重要だと思う。

そのためにもイベントもやっててさ。音楽の現場には間違いない感性を持ったアーティストがいっぱいいるけど、それを全体に享受するまでに至ってない。俺は、その感性がもっと多くの人に伝われば絶対いい社会になると思っている。だから、その橋渡しをしたいんだよね。もっと若いヤツらに伝えたい。日本中のロックを好きなヤツらが声を出せる環境を作ろうと思ってる。そこにしか未来はない。」

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TOSHI-LOW「考える力を奪い去られているし、人には干渉しない。その人がやさしくないわけじゃないんだけど、もし自分だったらという想像力が足りない。

音楽を深めていくと、自分で感じること、自分で考えることがすごく重要になってくるじゃない?だから、音楽をちゃんと聴いていれば自然と能動的に感じる力を身につけられると思うんだよね。何が本当の幸せなのか、もっともっと考えてほしいよ。」

「俺もずっと家族をないがしろにしてきたけど、311の前と比べると倍ぐらい家族との時間を持ってるね。もしかしたら明日にはこの生活がないかも知れないじゃんとか考えると、この時間をもっと増やしたいと思ったんだ。」

TOSHI-LOW「みんなあまりにも思考停止しすぎなんだよね。考えることが大事なのに。今までの豊かさが幸せだと疑ってないというか。311のとき、ろうそくの灯りの下でおにぎりを家族で食べて幸せを感じた人っていると思うんだよね。

そういう人達がこれから幸せを捉え直せるかどうかがすごく大事。もっと俺たちより若い世代にたくさんに出てきてほしいよ。ホントにそう思う。」

TOSHI-LOW
日本を代表するハードコア・パンク・バンド「BRAHMAN」のボーカルであり、「BRAHMAN」のメンバーが中心となり活動する「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」のギターボーカル。東日本大震災直後から積極的に支援活動をしている。10 月には音楽とアウトドアを楽しむキャンプイベント”New Acoustic Camp”を開催する。
島キクジロウ
2002 年までに300 回開催されたシリーズ・イベント“JUST A BEAT SHOW”の主宰者であり、1985 年より活動するパンクバンド「the JUMPS」のボーカリスト。2004 年、社会変革のための新たな武器を手に入れると宣言して突如活動休止、2009年司法試験に合格。現在、若い世代の感性を反映する社会の実現を目指すロックンローヤーとして活動を開始し、この8 月、「the JUMPS」を再始動した。アースガーデン”秋”にも出演する。