鉄道や車道、飛行機などが発達し、廃れてしまった日本の古道。これら古道の再利用が環境保全の観点からも見直されています。
そこで今回はトレイルハイクの最新ニュースをピックアップ。アメリカの三大ロングトレイルのひとつとして知られる「コンティネンタル・ディバイド・トレイル」に単独で挑戦した“夢を追う男”こと阿部雅龍さんを紹介します。
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2010年11月、旅の仲間から嬉しい便りが送られてきました。それは、コンティネンタル・ディバイド・トレイル(以下、CDT)単独踏破したという知らせです。
CDTは、全長4300㎞に及ぶアメリカ合衆国の豊かな自然景観が楽しめる長距離自然歩道のひとつ。
北米大陸の分水嶺(continental divide)、ロッキー山脈を沿うように走っているため、その名がつけられました。
カナダ国境からメキシコ国境まで続いているCDTの魅力は、コロラドの雪山からニューメキシコの砂漠地帯など、非常に変化に富んだ自然景観が楽しめることです。しかし、歩道の整備は、全体の7割ほどしか進んでいません。残りの部分は、コンパスと地図を頼りに険しい山や谷を越えていかなければなりません。そのため、グループでも踏破するのが非常に困難なトレイルとされています。
そんなCDTをワンシーズンで単独踏破したのが、阿部雅龍さん。彼の調べでは、CDTの単独踏破は日本人初の快挙となるそうです。
阿部さんは、自らを「夢を追う男」と呼ぶ秋田県出身、28歳の男性です。
幼い頃から東北の豊かな自然の中で遊び、学生時代は冒険家・大場満朗氏が主宰している「アースアカデミー大場満朗冒険学校」のスタッフとして働くなど、アウトドアに慣れ親しんできました。
そんな阿部さんは、2006年に自転車による単独南アメリカ大陸縦断に挑戦しています。当時まだ学生の阿部さんは、現在に比べるとアウトドアの経験も乏しく、資金的にも厳しい状況の中、赤道直下のエクアドルからペダルを漕ぎ始め、パンアメリカンハイウェイの終点、地球最南端の街アルゼンチンのウシュウアイアへと無事に走り抜きました。
その旅のブログ『夢を追う男 〜南米大陸自転車縦断行〜』は、NHK BSの番組で全国1000以上のブログの中から最優秀賞である『ブログおもしろ感動大賞』に選出ほどです。
総走行距離10,924㎞、290日間に及ぶその旅の記録は、決して晴れ晴れしい内容だけで綴られたものではありません。急峻なアンデス山脈の上り坂やパタゴニアの風などに悩まされ葛藤する、弱い自分の姿を赤裸々に語っているのです。そこには、南米の大自然に育まれながら、ひとりの人間としてどんどん成長していく阿部さんの姿が描かれていました。
今回のCDTの旅は、装備や時間に制限があるため、近況報告以外、旅の詳細に関するブログの更新はありませんでした。これから、どんな日記や写真が今回のブログ『夢を追う男 〜次の夢の実現へ〜』にアップされるのかとても楽しみです。
旅を終えたばかりの阿部さんですが、なんと次に夢の実現に向けて新たな旅の準備を進めています。
その資金を貯めるため、アースガーデン“冬”が開催される浅草で、今後しばらく人力車の車夫として働きます。ホームページで阿部さんの冒険の記録を楽しむのも良いですが、この熱い青年の引く人力車に揺られつつ、CDTの冒険譚を聞いて下さい。
最後に、日本でぜひオススメのトレイルをひとつ紹介します。
それは、長野と新潟県境に伸びる『信越トレイル』。このトレイルは、これまでの必要以上の森林伐採を行い、膨大な維持費がかかる大規模で開発的なトレイルとは異なります。かつての古道や国有林の管理道を利用し、その地域で暮らす人々が中心となって、官民一体となってトレイルづくりが進められています。そして、NPO団体やボランティアスタッフによって、その維持管理が行われているのも画期的です。
トレイルづくりを通して、次の世代に日本の美しい自然景観を残すための持続可能な取り組みです。阿部さんの旅に興味を持った人や環境保全に関心のある人は、2011年の旅の計画に信越トレイルを加えてみてはいかがでしょうか。
[文:Goonai 写真:阿部雅龍]