FUJI ROCK FESTIVALに通うわれわれにとって、新潟の「十日町」という地名は馴染みがある。

この不思議な町名の由来は「毎月10日に市が立っていた」からだという。市はきっと神社やお寺の参道に立ったのだろう。観音さまは18日、不動明王は28日といった具合にそれぞれ神仏にはご縁の日（縁日）というのがあって、その日には行事があったり、場所によっては的屋が出たりする。

１月は年が改まって最初の縁日だから、初観音、初不動などといって、どこも縁起がいい。

ここで天神さまの縁日というと毎月25日で、１月25日の「初天神」といえば落語のネタとしても有名である。

初天神にお詣りに行こうとすると、タイミング悪く子ども（金坊）が帰ってくる。こいつはどこに行っても「あれ買え、これ買え」とうるさいので辟易するが、金坊も女房も連れていけというので、やむをえず一緒に出る。

　境内も近づき屋台も増えてくると、案の定、金坊がせがみ出す。「飴を買ってくれ」「団子を買ってくれ」終いには凧を買えと凄む。「だから連れて来たくなかったんだ」。根負けして買い、親子で凧揚げを始める。が、あまりにも面白くて、親が夢中になって金坊に渡さない。「こういうものは子供のする事ではない！」金坊「こんな事なら、親父を連れて来るんじゃなかった」

この落語を聞いてからもう何年も、この舞台となった縁日を訪ねたいなぁと願っていたもののなかなか叶わず、それがようやく今年になってチャンスを得た。目指したのは上野近くの湯島天満宮。イメ－ジしているのはだだっ広い平地で、浅草寺のような参道で…あそこまで大規模でないにせよ通りに店が並んでいて、たこ揚げをするのも、空の広い原っぱのようなところだ。実際はどんな場所だろうか。

上野・不忍池のほとり「湯島」駅で下車。そこから案内表示にしたがって歩いていく。
アレ？イメージしていた平地じゃあない。最初から山坂だ。少し息が上がりながら到着。さぞ出店が軒を並べているんだろう。

想像していたよりもだいぶこぢんまりしている。

午前の時間に行ったからか、左右の出店もまだ本格開店していない。というか、もう本殿がすぐそこに見える。飴は？お団子は？？

江戸後期の天保年間に刊行された『江戸名所図会』には、往時の様子が描かれている。
（下の写真はちくま学芸文庫版 『新訂　江戸名所図会』）

土地の区画整理などで現在は本殿に接したスペースのみ残っている、というところだろうか？かつてはそれはそれは賑わいをみせたのだろう。今日、たこ揚げをしようにもすぐそばまでビルが並んでいる。

お参りが済んだら、今回のお楽しみ！待ってました！
本日会場限定で販売される、木彫りの「うそ」をゲットせねば！！

～古来より、天神さまゆかりの鳥として親しまれている「鷽」(うそ)＜中略＞平素私達が知らず知らずのうちに使う「嘘」を、天神さまの「まこと」に替えていただき、正しい幸運を招く意味から初天神の一月二十五日に、この鷽鳥を木彫りにした「鷽」を新しい「鷽」と取り替える神事が「鷽替え神事」です。＜中略＞凶事をうそにして、幸運に替えることを念願して行われたもので、江戸時代はじめから始まったと云われています～（湯島天神のHPより抜粋）

昨年は２５日が休日だったのもあって大混雑で、うそも朝の９時には完売していたようだが、今年は月曜日だったせいか、売り場への行列もスムーズ。無事、２つのサイズのうそをゲット成功！！

か、かわいい。。。この日は午後３時頃に完売した模様。配送もされていないようで本当に今日ここにおまいり出来た人のみ。プレミア度高し。

ここで念願のうそも手に入れたので、改めて境内を散策。
学業の神様をおまつりしているだけあって、いたるところに合格祈願の絵馬が。

そして獅子舞におみくじを引いてもらう。
「小吉」でした。

天気も良くて気持ちがいいので、そこからぶらりと不忍池まで足を伸ばす。
きっと金坊とおとっつぁん親子もこの池のほとりでたこを揚げたんだろう。

通りを曲がるとすぐそこに上野の寄席「鈴本演芸場」が。このまま寄席で「初天神」なんぞ聞けたらこりゃあ粋だなぁなんて思ったが、時間もなくこの日は終了。

新年の忙しさをつかの間忘れる、のどかな時間を過ごしたのでした。