【eijiのAnywhere LIFE is FESTIVAL】隈研吾が設計した能舞台で行われる「森波~ Wood Vibration ~」

このコラムは『FESTIVALの楽しさ』をなるべく多くの人に伝える事を目的に、Dachamboのメンバーとして日本中を駆け回った経験の中からTVには映らない地方の小FESなど『変わったFESTIVAL』にスポットをあて紹介して行きます。

第2回目は、宮城県登米市にて、クラブミュージック、ダンスミュージックを中心に毎年6月中旬に行われている「森波~ Wood Vibration ~」を紹介します。仙台中心部から車で北に1時間程度に進んだ場所に登米市はあります。地名からわかるように江戸時代から有名な「米」の産地です。

森波を主催する柴田さんは、3代続く接骨院を営む傍ら、CAFEも経営するしています。そんな柴田さんが話してくれたのは、地方FESTIVALの現実と、リアルな活動方法。そして、それは音楽を愛している人の10年に渡る物語でもあります。これを読んでまたFESTIVALに足を運んでみるのはいかがでしょうか??

イベントを開催している人やFESTIVALをやりたいと思ってる人は必見の内容です。

左の方が、主催者の柴田さん。
左の方が、主催者の柴田さん。

EIJI:今日はよろしくお願い致します。まず「森波~ Wood Vibration ~」の簡単な歴史と、どうして始まったのか?教えて下さい。

柴田:森波は、2008年6月に地元の小さなキャンプ場で始めた野外パーティーです。今回で9回目になります。当店(CAFE GATI)の開店(2007年初頭)以来、繋がったミュージシャンやDJに声をかけさせてもらって始めました。

EIJI:Dachamboも『CAFE GATI』にはツアーでよらせていただきました。それが、どうして野外FESTIVALになったんですか?

柴田:最初はとにかく野外で音鳴らしたかっただけなんですね(笑)地元の方々には「地元を盛り上げたい!」「地域振興!」とか言って理解を求めたりしましたが、実のところはやりたかっただけでした。

EIJI:やりたかっただけ!!!!!(笑)良い歳して『初期衝動』ですね。

柴田:ほんと迷惑ですよね・・・(笑)知らない人からすれば単なる騒音ですから・・・(笑)とはいえ、そんなことを続けていると、それを面白がってくれる人が増え多少なりとも注目を集めたり、実際に登米にいらっしゃる方が増えました。

結果として地域貢献になると思いましたし、今でもそう信じています。さらには、森波の存在が登米を出た若者のUターンの動機付けにもなってます。「おらが村も捨てたもんじゃねーな」的な勘違いを生むことに成功しました(笑)

今ではそんな若者がスタッフの中心となってたりします。なんだかんだ言って、このことが一番いい影響かもしれませんね。

EIJI:全国どこでも若い定住者やUターンを求めて、市町村では予算を割いて動いています。『CAFE GATI』のOPENから始めた音楽イベントが次第に大きくなり、野外FESTIVALまで成長して、さらに、若者達が町に帰って来たのは本当の成功例ですね。

今、思い返してみると、初めて『CAFE GATI』に行った時は衝撃でしたよ。田舎の田んぼの真ん中にポツンとCAFEがあって、イベントになると人が集まってくる。接骨院の先生が、お店を始めるということが、あまりピンとこないのですが、動機はなんだったんですか?

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柴田:どこの地方もだと思いますが、うちのような農山村部の町では『地元が、つまんない、何もない、ダサい、、、』っていう嘆きや自虐が日常化してるわけですね。でも、ここで生きている限りこの中で楽しむ場所を作るしかないじゃないすか。そこで自分が何ができるかを考えたんですね。

そのときに、音楽と写真とコーヒーが普通の人よりは好きだったので、それが軸となった店を始めたらいいんじゃないかと。もともと地元にそういう文化があったとか、そいう仲間が集まったとかじゃなく、無根拠に始めたんです。始めないと死んでしまうんじゃないかと思うぐらい、当時の自分は切羽詰まってました。

EIJI:そんな田舎町で行動を起こしたのはすごい事ですね。『CAFE GATI』の音楽イベントは何がキッカケで、いつから始まったんですか?

柴田:元々、クラブ/ダンスミュージックばかり聴いていて、全くバンドのことを知りませんでしたが、10年以上も前に地元で行われた音楽イベントに協賛したことがあって。正直あまり興味もなかったのですが行ってみると、昭和歌謡とブラックミュージックがグチャっと混ざったサウンドでまるで場末のスナックのママがステージ上で転げ回ってるような、しかも女性だけのバンドを目の当たりにしまして・・。

いい意味でものすごく衝撃でしたね・・。しかも皆さん大学出たぐらいの20代前半だと聞いてさらに衝撃でした。それが「ズクナシ」との出会いです。で、お店のオープニングはズクナシに来ていただきました。

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そんな感じで自分がいいと思うDJ、バンドに来てもらおうと、2007年の1月からお店をスタートさせたんです。その後、友達から教えてもらったバンドが「Cro-magnon」。まずは東京にライブを見に行ったのですが、30歳を過ぎて、こんなショッキングな体験できんだ?っていうぐらいの落雷だったんです。ダンスミュージックの延長にこんなバンドが存在するんだ!!っていう・・自分が何も知らないことを思い知らされました。

その過程で「Dachambo」はもちろん「SOIL&”PIMP”SESSIONS」、「犬式」なども知ることになりました。それからあっという間にいろんなミュージシャン、DJと繋がってお店に来てもらうようになった・・・という延長に、今日の森波があります。

EIJI:「ズクナシ」で始まり、そして「Cro-magnon」で衝撃を受け、様々なBANDやDJに広がっていった。そんな音楽イベントも2007から数えて10年目、森波が始まって9年経ちます。秘訣だったり考え方を知りたいです。あと、助成金や援助は受けていなんですか?

柴田:秘訣もクールなやり方も知りませんし、助成金も大きな協賛もいただいてません。助成金や大口の協賛をもらっていないのは「行政に媚びるな!」とか「大資本、大企業は敵だ!」とかそんなパンク精神ではなくて、単純に生存戦略だと思ってます。まぁもちろん「もらってない」ではなく「もらえない」のが現状ですけどね(笑)

例えば、予算の関係で行政の援助がストップしたり、景気悪化でビッグスポンサーが撤退したらその瞬間、有無を言わせずイベントは終了なんですね。もし続けたとしても大幅にコンセプトや規模を変える事になる。結果的に、やってきたことに大きな断絶を生んでしまうはずです。

なので、協賛は、信頼している個人や個人事業主の方から徹底的に小口でいただいてます。一般的には、これが関係者にとってものすごいストレスになりがちですが、会を重ねるたびに「今年もやるよね?協賛用意してるから取りにきてね!」とか言ってくださる方がほんと多いんです。ありがたいですね。やってて良かったと思える瞬間の一つですね。

誰かが「今年はちょっと協賛できないな、、」てなっても予算的にはほとんど影響がない。これはクラウドファンディングとは、似て非なるものです。パーティーは商品開発とかローンチとかでもないし、1回開催して採算取れたからよかった、利益出たから最高、でお終いにするものではないのですからね。顔の見える範囲で長期的な付き合いの中から生成させてくのが、自分たちの身の丈に合ってるし、それがリアルなわけです。

現状、なかなかうまくいかない事だらけですが、それでもこんな感じで今回で9回目と、しぶとくやらせてもらってます。

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EIJI:運営のスタッフはボランティア中心ですか?

柴田:お店に来てくれてる有志やその仲間がスタッフをやってます。地元のスケートチーム「union spot」の存在もすごく大きいです。実質の運営はほぼうちの店(CAFE GATI)が主体です。興行を知ってる人間は誰もいませんし、僕も含めとにかく見事なぐらい素人集団です。

EIJI:それでも続けられていますよね。

柴田:結局のところ『続けることが大事』と言いますが、本当にお店もパーティーも、全てそこに尽きるんだと思ってます。時間を重ねること、試行錯誤を繰り返すこと、その中で歴史みたいなものが蓄積されて、その土地と時間に軸が生まれるんだと思います。だから、そこに思い入れや誇りといった感情移入が起きるんだと思うんです。

その土地に住んでるだけで、誇りや感情の移入が起きるかって言ったらそんなことはないすよね。過疎地でも古くからの祭り、神社仏閣、なんかが現存してる地域は、独特の磁場と強さを感じます。過疎、高齢化、景気後退、とは何も関係なく淡々と人々が生きてる場所です。そんな街を見るとすごく憧れてしまう。なので続けて次に繋げることしか考えてません。ま、最低100年(笑)

とはいえそんなことに価値を感じるフォロワーがいなければ終わるだけですが。。一昨年から開催場所を変更したのも持続可能な形を考えたからなんです。始めた頃に比べて運営側の人間も年をとりました。結婚、出産、育児、仕事、親の介護、自分自身の体力の低下といった始めた頃は考えもしなかった現実の中でどうやって続けてくか、いかにして好きな音楽と共に豊かに遊び続けるか、ほんと、そんなことばかり考えるようになりましたね。

EIJI:そんな現実的な選択で場所を変えましたが、『能舞台』とは面白い会場ですね。

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柴田:いろいろ話題になった新国立競技場のデザイン案が採用された隈研吾さんの96年の作品「登米町伝統芸能継承館-森舞台ー」という地元の能の舞台を使わせてもらってます。

地元には江戸期から続く能の文化が残ってます。これは伊達の支配下にあったわが町の伝統で『 伊達政宗 』がとにかく芸事、特に能にものすごい情熱を傾けていて庶民に推奨したらしいんですね。

さらにうちの町は変わっていて特定の家元や世襲で後世に伝えたわけでなく、民間の人間、つまりやりたい人がやり続けてきたわけで、どことなくストリートの延長なんですよ。そんなノリだから舞台を使わせてくださってるのかもしれません。

日本中いろんな土地に能舞台が存在するかと思いますが、うちらのような形で使わせてくれるところはおそらくどこもないでしょうね。本当にありがたい限りです。ましてやこんなに気軽に隈研吾の代表作で、音楽イベントをやらせてもらえるなんて、日本中探しても絶対にないでょうね。本当にありえないぐらいの幸運です

EIJI:僕も昨年『KEYCO BAND』で出演しましたが、素晴らしいステージでした。それにポスターなどの美術も凄いですね。あれはTOKIO AOYAMAさんですね。

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柴田:ありがとうございます。キャンプ場で開催してた時からTOKIO君には、ライブペイントやワークショップなどいろいろお願いしてきました。秋田の山間部に住みながら国内のいろんな音楽の現場やギャラリーと繋がり、LAやロンドンなど外交もたくさんしている。作品だけじゃなく、TOKIO君の活動のあり方自体に、東北の人間としてものすごく影響を受けてきました。

能舞台に移ってからはフライヤーのデザインもお願いし、徹底的にコンセプトやビジョン、イメージを出し合い、毎回素晴らしい作品を提供していただいてます。森波のポスターをどこかで貼っていただいたときに、作品として鑑賞できるような、そんなイメージで毎回製作していただいてます。今年も素晴らしい内容ですよ!期待してください!

EIJI:ホームページの注意書きの「ノールール・オンリーマナー」というのも面白いですね。

柴田:みなさん、そう思ってるはずだと思うんですよ。このご時世、注意書っていたるところに細々記述されてるじゃないですか。イベントだけじゃなく、買ったものほぼ全てに、訴訟、責任、義務なんかをケアするあまり、もうこれでもかっていうぐらい提示されてますよね。

あれがほんと興ざめるので、僕らがやってるパーティーは、ルールを最低限にして、お客さんを信じて楽しむことに注力したいんです。。ま、規模が規模だからこんなこと言えるのかもしれませんが・・もちろん、森波はスーパー法令遵守パーティーです!!(笑)

EIJI:イベントをやってわかった事やイベントをやろうとしている若い人にアドバイスがあれば、教えてください。

柴田:「やった方がいいよ」「やらない方がいいよ」と、どちらもいくらでも言えますよね。経済的な合理性から言えば絶対にやってはいけない!(笑)コスパ悪すぎます・・(笑)

なのになぜやり続けるんだろう??やらないと知りえないたくさんのsomethingがあるわけです。知らなくても良かったと思えることもたくさん知ってしまう。持てる時間、お金、体力、繫り、信頼、センス、、、を総動員して死力をつくすわけですね。

そんなキワキワの状況になってくると、必ず起きるいろんなことがあるわけです。その繰り返しの中で浮き彫りになるいろんな現実を、嫌というほど知ることになります。やることで自分の力量だとか能力をこれでもかってぐらい思い知らされるので、結局そこに耐えきれなくなるとイベントは終わるんだと思います。

経済上の理由や周りの環境のせいにしたくなるけど、実際はやる人間の身も蓋もない全てが試されるだけだと思ってます。だから小規模イベントの主催者の多くは、ボロボロになってしまうんですよ。仲間作りのつもりが、仲間減らしになったりします、、必ず。それでもまたやってしまうんですよね。

なので我を知るにはパーティーをやるべきです。「自分探し」より「パーティー開催」を薦めますね(笑)

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EIJI:では、最後に今年のみどころを教えてください。

柴田:今年は男性ボーカル祭りです。昨年はほぼほぼDIVA祭りになって、本当に感動しました。ちょっと安易ですが今年もそんな感じでやらせてもらいます。EIJIくんにはUNDER THE DOGSのメンバーとして出演して頂きます。よろしくお願いします。

あと、昨年の模様をこちらからご覧いただければです!

ムービーは地元の若い映像クルーによるものです、スチルはなんと先日まで高校生だったウンババことクリノスケ!後ほどFBの森波のページに画像をUPしますので、こちらもご覧ください!ちなみになのですが、クリノスケは先日発表されたロッキングオンの「音楽文大賞」で最優秀賞を受賞してる才能の塊ですよ。高校生がプログレについて語ったアツい文章です。こちらも是非!

というわけで全国の音好きの皆様、ぜひ遊びにいらしてください!!

森波2016~Wood Vibration~

日程:2016年6月25日(土)
時間:開場:10:00 / 開演:11:00 / 終演:21:00
場所:宮城県登米市登米町 伝統芸能伝承館「森舞台」
料金:前売り:5000円 / 当日:6000円

演者

cro-magnon
光風&GREEN MASSIVE
MARTER band 【MARTER (jazzysport) / コスガツヨシ(cro-magnon) / shinju kobayashi((仮)ALBATRUS) / poi akiyoshi】
UNDER THE DOGS 【椎名純平(ヒトサライ) / EIJI (Dachambo) / IZPON / 大竹重寿(cro-magnon)】
小池龍平+エマーソン北村+沼澤尚
TOKIO AOYAMA

アフターパーティー

@CAFE GATI
OPEN : 21:00
森波来場者:1000円
当日:2000円
ゲストDJ: KAORU INOUE

お問い合わせ

森波実行委員会(CAFE GATI内)
0220-52-2152

eiji

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日本を代表するJAMBAND『DACHAMBO(ダチャンボ)』のベーシストとして7枚のALBUM、2つのDVD作品をリリース!!2004年からFUJI ROCK FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVAL、SUMMER SONICに代表される全国数々のロックフェスに出演。ペインティングユニット『gravityfree』×シューズブランド『KEEN』とのコラボマイクロBUSに乗り毎年全国ツアーを行っている。アメリカ、オーストラリア(4度)とツアーを成功させ近年では海外FESTIVALからのオファーを受けるようになる。

イベント制作者としては、2011年のバンド主催『D.I.Y』イベント『HERBESTA’11』で制作、運営、出演の3役をこなし、1万人以上を集め大成功をおさめ、その後、制作の依頼も多く現在は『富山ホットフィールド』などの制作にも携わっている。

2012年からはシンガーソングライターとしての活動を始め3枚のALBUMを発表し、FUJI ROCK FESTIVAL’14、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO、中津川THE SOLAR BUDOKAN 2014に出演を果たしている。

official HP:http://dachambo.com/eiji/

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