この映画の中では若者たちが、あくまでカジュアルに小気味よく、農業、エネルギー、経済、政治、教育、ともすれば大きすぎてもてあましてしまう課題に向き合い、フランスから、アメリカ、イギリス、スペイン、インド、アイスランド、デンマーク、ドイツ、スイス、フィンランド、世界各地のローカルと草の根で着々と育っている希望のタネを写して、物語を等身大につむいでいきます。その内容はとてもリアルで、何より見ていて心地よい。
見た後に誰かと話したくなる、そして仲間に紹介したくなる、とても素敵な映画に久しぶりに出会えました。
草の根の活動が同時多発的に、世界中でムーブメントに!?
311震災があって、福島原発事故があって、何十年ぶりかの政治の季節がめぐって、時代がひと巡りしたようなこの数年。そして、友達や知り合い、そのまた知人の日々と実感が、SNSの上でリアルタイムで押し寄せて、ソーシャルな意識やムーブメントも、それがローカルやコミュニティに広がっていく様子も、facebookなどで容易に共有できる毎日。
希望を伝えてくれる情報や仲間の姿はいっぱい伝わってくるけれども、それがどこまで世界につながって広がって、この時代に共有されているのか、なかなか実感できなかったところが、この映画を見ながらひとつひとつ繋がって、草の根の活動が同時多発的につながっていて、世界中で起こっているムーブメントとに育ちつつあることを垣間見せてくれます。
僕たちの未来は危ういと感じた数人の若者たちの旅
この映画で世界中を旅するのは、気候変動や人口爆発などで僕たちの未来は危ういと感じた数人の若者たちなのですが、彼らはたまたま有名な女優だったり映画制作の技術をもっていたりしたのだという感じです。少なくともそれぐらいの気楽さでこの映画のために世界をめぐっていく雰囲気です。1人1人の等身大の感覚で、学者さんや地域のオーガナイザー、農家や環境ビジネスマンや役人などの活動に触れて話しを聞いていく様子がつながれて、あくまでカジュアルにこの映画の心地よさが生み出されていると感じました。
この映画を素材にした場づくりや対話の可能性
そしてその心地よさが、90分の美しい映像と情報のまとまりになって提示されることで、見終えた僕の中でリアルな物語が活発に動き出しました。そしてこうして、頼まれてもいないのにこの映画の紹介をし、メディアや市民活動家の知人たちへの試写会まで開き、たぶんこれからも何かしらこの映画を素材にした場づくりや対話を試していきたいと思っている自分がいます。
この映画が示してくれるコミュニティの未来は、少なからずこれからの地球市民の進む道の必然を示しているように感じました。そういう意味で、この映画はロードショーよりも自主上映などで広がっていく可能性が高いようにも感じています。
この映画自体がある種のムーブメントになる可能性も含めて、この映画がどこまで僕たちを刺激してエネルギーになってくれるのか、とても楽しみで刺激的でもある作品です。
ドキュメンタリー映画
『TOMORROW パーマネントライフを探して』
12月23日 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
見どころ
「農業」「エネルギー」「経済」「民主主義」「教育」の5つの分野を渡り、パーマカルチャー、トランジション・タウン、ゼロ・ウェイストなど、世界中の新しい取り組みを行っているパイオニアたちが続々と登場。効果的に挿入される、手描きの図解やイラストも楽しく、旅で出会った自然の美しさ、そこに生きる人々のひたむきな表情や無邪気な子供の笑顔に胸を打たれる。これは、人類滅亡を招く“悪”を告発するのではなく、滅亡しない方法を見つけるという、スーパーポジティブな作品で、男女、年代、国境を超えて興味を喚起する、斬新でワクワクするかつてない“提案型ドキュメンタリー”に仕上がっている。新しい世界を創り始めたカリスマやパイオニアたちと出会い、世界とつながる至福と気づきへの2時間の旅。
第41回 セザール賞ベストドキュメンタリー賞受賞
監督:シリル・ディオン、メラニー・ロラン『イングロリアス・バスターズ』『オーケストラ!』
出演:シリル・ディオン、メラニー・ロラン、ロブ・ホプキンス、ヴァンダナ・シヴァ、ヤン・ゲールほか
2015年/フランス/120分/シネスコ/カラー/原題:DEMAIN /日本語字幕:丸山垂穂/
協力:ユニフランス・フィルムズ/配給:セテラ・インターナショナル/
©MOVEMOVIE – FRANCE 2 CINÉMA – MELY PRODUCTIONS
http://www.cetera.co.jp/tomorrow/