先日80才になった気丈な母が言った「寂しくないわ、本が友だちだもの。」その一言がなんだか頭から離れない。母は携帯を持っていないし、当然ながらSNSもやっていない。末っ子である彼女の兄弟は死んでしまったし、友だちも病気がちだ。久々に一緒に温泉に入っているときに、母がつぶやいたのだが、なんとなく言ったようには聞こえなかった。本心だと思う。でも、何か覚悟みたいなものを感じた一言だった。
私たちがあと数十年後に年老いた時には、ネットワーク上での人との出会いは、どう変化しているのだろう?今のSNSも若く体力のあるうちは、<今は>会えないし会わないけど、会おうと思ったら会えるだろう友だちとSNSで会話している。でも体に自由がきかなくなって実際に会えそうもない友だちとどんな風に繋がり続けることができるのだろう?今想像できないようなハイテクなものが誕生しているだろうと思うが、心はそれだけで安心できるのだろうか。
直接会えることや、肌のぬくもりなしに、私たちは会えないだろう友人たちとどんな気持ちで繋がっていくのだろう?
さて、昨年のearth garden“秋”からスタートした<MY ROOTS BOOKS>は、楽しい代々木公園でのFESから、もう一歩踏み込んで感じてもらうためのコンテンツだ。代表の南兵衛はじめ、スタッフ関係者の愛着のある本や最近のおもしろかった本をもちより、自由に読んでもらえるブースを用意して、みなさんをお待ちしている。持ち出しは厳禁ですよ。
Amazonには「おすすめ商品」という、過去の履歴から関連している本を薦めるサービスがある。<MY ROOTS BOOKS>に置いてある私たちの本は、来場者のみなさんへ、イベントearth gardenという共通項がある私たちからのおすすめ本として見てもらうのも、一つの見方だと思う。
私自身はタブレットで資料的な本や漫画を読むこともある。でも、好奇心から買ういわゆる書籍は、かばんが重くなると悩みつつも、結局本屋に行って買ってしまう。ページを一枚一枚めくる行為、装丁、紙の質感、大きさや厚み、重さ、文字や印刷、インクの匂い、行間やページの余白の印象など、情報としてでなく、物としても好きなのだと思う。
本を持って読むときには、ページをめくりながら、書いた人関わった人たちの気持ちに触れているような感じがする。だから、大事にして、読み終わったら誰かに「おもしろかったよ。」と書いた人の想いごと手渡したくなるのだ。
私にとって紙の本を読むことは、SNSではなく人と直接会って話すような感覚に近い。そういう意味で母の言った「寂しくないわ、本が友だちだもの。」という一言は、本が大好きな母らしい一言だと改めて思う。
さて、この読書の秋、earth garden“秋”の開催を前にして、まだ読み終わっていない最近“表紙買いした本”をご紹介しよう。<MY ROOTS BOOKS>でも是非手にとってご覧いただきたい。
文庫 死を悼む動物たち (草思社文庫)
子どものとき、実家で2匹犬を飼っていて、老犬が亡くなったとき幼犬であったもう一匹が遠吠えを長い間つづけたのを見た。親に叱られて泣いていると、顔を舐めにきてくれた。動物は仲間が死んだときに何があるのか?それが知りたくて買いました。
いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ 稲葉俊郎 著
この真っ赤な装丁がたまらない。触り心地も品も良く、本棚にいれて蔵書にしたくなる一冊。東大病院のお医者さんの著者は、西洋医学だけでなく伝統医療や代替医療などにも通じている面白い方。医療以外の芸術などにも話しが及んでいて、とっても興味深い。
では、earth garden“秋”の企画<MY ROOTS BOOKS>に、是非お越しください。今回はスタッフの“表紙買いした本”をご用意して、お待ちしています。