アースガーデンが運営する朝霧JAMのフリーマーケットエリア。2018年に初め出店してもらった移動式の古本屋さんがあります。長野県上田市からやってきた『ブックバス』です。会場にやってきた本の数は、およそ1000冊。野外のフェスティバルとは切っても切れないやっかいな雨や風も、バスなら安心です。
お客さんはライブを見たりキャンプをしたくて、チケットを買って来場しています。果たして、本は売れたのでしょうか?そして、古本屋さんから見たフェスティバルとは?ブックバスを運営する市川健吾さんと西山卓郎さんにお話を聞きました。
朝霧JAMのお客さんは、みうらじゅん好き!?
「想像以上によかったなぁと思っています。長い人は30分くらい本を選んでいる人もいましたよ。親子で来たファミリーはお子さんが出たがらないようで苦労していました(笑)」
朝霧JAMでの出店では、想像以上の成果を得られたようです。お客さんは、どんな本に興味を示したのでしょうか?
「今回の選書では、非日常感を意識しました。例えば、旅がテーマの本であっても、普通のガイドブックではなく、秘境を巡るような旅や、一般的な観光地ではない場所を提案する本。音楽系の本も持っていきましたし、アウトドア系の本も持っていきました。反応が良かった本は、みうらじゅんの本です。ほぼソールドアウトでした。音楽系の本や手塚治虫の漫画も売れてましたね。ファミリー層には絵本も。じっくりと読むような文学系の本も意外と売れました」
まさかの、みうらじゅん!アウトドア系の本は、手にとるものの意外と売れなかったようです。街や家で読むからアウトドアな環境が恋しい。実際にアウトドアな環境に身をおいているとそんなに関心が湧かないのかもしれませんね。
「フェスティバルの夜に、たき火を囲みながら本を読む時間を過ごしてくれていたら、すごくうれしいなぁと思います。とても豊かな時間の過ごし方ですよね」
朝霧JAMのように会場での過ごし方の自由度が高く、キャンプをしながら夜をゆっくり過ごせるフェスティバルは、読書の時間が加わることで新しい体験が得られそうです。
Amazonの古本屋バリューブックが、ブックバスを運営
ブックバスを運営しているのは『バリューブックス』という会社です。Amazonで古本を買う人なら、知っている人も多いのではないでしょうか。毎日2万冊もの本が査定のために送られてきて、1万冊を配送しているけっこう大きな規模の古本屋さんです。
「私たちの仕事の大半は倉庫作業です。大きくて、閉ざされた空間。お客さんと直接接することもありません。でも、私たちが扱っている古本が、どのように役に立って、どんな人を喜ばせているのか、知れたらうれしいじゃないですか」
バリューブックスの取り組みは、ブックバスだけではありません。
読み終わった書籍・DVDなどを集めて換金し、さまざまな社会課題に取り組む団体に寄付する『charibon』。累計寄付総額は4億円を超えて、日本最大級の寄付事業になったと言います。
フリースクール、学校、保育園、養護施設などに本を寄付する『book gift project』では40箇所を超える場所に本を届けています。
上田市には、カフェ『BOOKS&CAFE NABO』と、私設図書館の『Library lab』をオープンさせました。
「Amazonの古本屋として『バリューブックス』のことを知っている人。ブックバス、カフェなど個別のプロジェクトを知っている人。それぞれ少しずつ増えてきましたが『バリューブックスが様々な活動をしている』ことを知っている人は、そんなに多くないと思います」
これって、すごくもったいないことなんじゃないかと感じました。せっかくなら、こんなステキなことをしている会社から本を買いたいし、売りたい。でも、Amazonの購入画面だけでは見えてきません。
「本は、売り買いや貸し借りが頻繁に行われます。人から人へ、グルグルと回っていくもの。送られてくる本には、書き込みやへそくりが入っていたりします。前の持ち主の痕跡が残っていますそういった『人』を感じられる経済の一部を担っていることは、誇らしいことです」
Amazonは、GAFA(Google、Apple、facebook、Amazonの頭文字)と呼ばれ、良くも悪くも現代を象徴する企業のひとつ。彼らは、個人データを圧倒的な規模で集めています。私たちは便利さと引き換えに、自分の趣味や思考、行動のデータなどを渡しているのです。それが私たちの未来を明るくするのか、暗くするのか、全く分かりません。
しかし、Amazonを通じて買ったバリューブックスの本は、確実に人の手を介して、私たちの手元に届きます。そのことに、僕は一筋の光を感じるんです。これからどんな未来をつくっていきたいか、ブックバスで買った本を読みながら、アースガーデンでも語らいたいですね。
写真:葛原信太郎
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