誰かにとって不要なものでも、誰かにとっては価値がある。自然素材にこだわる「森の民」|earth garden “春” 2019 出店者

「この家にあるものはほぼ全て、拾ったか、もらったか、作ったものです。誰かにとって不要なものでも、誰かにとっては価値がある。丁寧に探していけば、掘り出し物だらけですよーー。

earth garden “春”には、アースガーデンの選りすぐりの出店者さんが揃います。
今年の出店者である森の民のサカノさん・アヤパンさんに話を聞きました。

お話を聞くために伺ったアトリエさえ、要らなくなったものでした。10年ほど放置されていた空き家を借りて、仲間とともにリノベーション。アトリエ兼住居として利用しているそうです。なぜ、そんなに誰かの要らないものが集まってくるのでしょうか。

「今の時代、廃棄することに手間やお金がかかります。例えば、竹林整備をすると、切り倒した竹の処分に困ります。山の中では火事の心配から、簡単に燃やせませんから。お金を払って、処分を委託することが多いんです。僕らは竹林整備のお手伝いをして、ギャラの代わりに竹をもらう。街中を散歩しているときも、注意深く観察しています。解体している家を見つけたら、いち早く交渉して木材などの自然素材をもらう。木戸や柱、床材、なんでもです」

森の民では、もらったり拾ったりした自然素材を使って、モノづくりをしています。メインの商品は、ボタンと楽器。ボタンは、洋服や織物を作っている人が素材として購入し、年間に数千個は販売しているそうです。楽器は、鼻息で音を奏でる『鼻笛』をメインに、ディジュリドゥやシェイカーなども制作しています。

「自然素材にはこだわっています。例えば、調達した木材は自然乾燥させているんです。一般的な商品は、薬品や機械で乾燥させるので時間を短縮できますが、自然乾燥には2~3年かかる。加工も手作業ですから、手間も時間もかかる。しかし、できあがったものはふたつとないもの。自然素材を、丁寧に拾って、丁寧に加工すれば、タダで拾ったものでも売り物になるんです」

森の民が自然素材にこだわるのはなぜでしょうか。

「自然素材と向き合うのはおもしろい。上手に付き合えば、必ずまた命が巡り成長して、持続的に手に入る。長い年月をかけて自然がつくった芸術品です。素材として、こんなにおもしろいものはないですよ」

欠けているものを補い合う仲間

森の民のみなさんの元には、モノだけでなく、人も集まってきます。

「不思議と、悩みや寂しさを抱えている人が自然と集まってきます。でも、僕たちは彼らを癒やすために活動しているわけじゃない。大したことはしてあげられないのですが、役割を渡すことはできるかなと。自分なりに役割を見つけてくれれば、それを応援します。

僕らも偏っていたり、欠けていたりする人間だから。そうやって助けがあれば、贅沢な暮らしはできなくても、自立して生計を立てることはできると思うんです。モノだけじゃなく、スキルや知恵を補い合うコミュニティがつくれれば、個人がたどり着く未来のもっともっと先にいけるはず」

ものづくりに興味がある高校生の双子、10年前からうつ病を患う男性、年金生活の高齢者、多様なバックグラウンドを持つ人が集まります。今の生活に何かモヤッとしたものを抱えている人は、ぜひ鼻笛が賑やかな、森の民のブースへ。

earth garden “春” 2019