コロナ禍以降、代々木公園のあらゆるイベントは中止され、長らく開催されていなかった。10月の終わり、やっと再開できることがきまり、そのはじめのイベントとして開催を許可されたのが「earth garden “秋” / re:LIVE 東京 fes」。
『もっと自由なオーガニックを』をテーマにしたコミュニティフェスとして、全体をアースガーデンがコーディネート。自然に根ざした60ほどのクラフト作家さんや、小さなブランド、個人店が集まってくれた。
「re:LIVE 東京 fes」と銘打ち、ロフトプロジェクトとLD&Kらと共に企画したライブステージは、配信も含めて、多くの人が参加。アースデイ東京と企画、運営したトークステージでも、濃いセッションが繰り広げられた。
re:LIVE 東京 fesのスタートを飾ったのは「TEX & Sun Flower Seed」。アースガーデン最多出演者である彼らは、代々木公園イベント再開のはじまりの音としてもっともふさわしいバンドだ。軽快なリズムが、フェス全体の気分を高めていく。
続いて「佐々木亮介(a flood of circle)」が登場。ハスキーな歌声が、秋空に響く。アースデイ東京2018に出演したときの思い出を語りながら『忌野清志郎 / JUMP』をカヴァー。a flood of circleのニュー・アルバム『2020』から『人工衛星のブルース』も披露された。
「あなたがここにいてほしい」
先行きが見えない不安な時代。誰かに肯定してもらえることがどれだけうれしいか。参加者に「超スーパー元気でいてください」と伝え、ステージをあとにした。
気温も上がり過ごしやすくなった昼下がり、アースガーデンが挑戦してきた「コロナ時代のフェス」に何度も出演していただいている「NakamuraEmi」のステージがスタート。
披露した『一服』は、禁煙者から喫煙者の気持ちを想像する曲。価値観が多様化し断絶する世界のなかで、自分とは違う相手への優しい想像は、今の時代に必要だ。最後の曲は「モチベーション」。身体が動き出す。これぞフェス。
フェスを見渡すと、例年より少し規模は小さいものの、密度は高く、人々が会場内を行き交う。久しぶりのフェスに、参加者の笑顔が溢れている。
参加者の中には、フジロッカーにはおなじみのこの人も。 たぶん、ご本人だろう(笑)。
陽の光がだんだんと赤くなり、夕方にむけて人も増えてきた頃「大森靖子」のステージがはじまった。黒い衣装に赤いマイクケーブル。
ステージで舞い、叫び、空を仰ぐ姿に参加者の呼吸も浅くなる。自分の身体が、彼女に鷲掴みにされ、決して目を話すことができない。時の流れがゆっくりと進み、ステージのまわりの空気が濃縮しているかのような錯覚を覚えるほど、圧倒的なライブパフォーマンスだった。
陽がすっかり落ちたころ、本日のトリ「いとうせいこう is the poet」のライブが、ゆったりとしたリズムでスタート。
「人は万事の霊でなくもよし、 万物の奴隷でもよし」
鼓動と同じくらいのリズムに乗った「田中正造」の言葉が、体に染みてくる。まさに今の人類へのメッセージだ。段々と空が漆黒になり、リズムも上がっていく。実際に踊っている人もいたし、頭の中で踊り狂っている人もいただろう。それぞれの楽しみ方で、それぞれのコロナ時代のフェスを過ごしてくれた。
ふと空を見上げると、満月が浮かんでいた。
「earth garden “秋” / re:LIVE 東京 fes」は11月1日も開催。代々木公園のイベント再開を祝うために、ぜひたくさんの人に集まってほしい。
写真:須古恵