コロナ禍以降、代々木公園のあらゆるイベントは中止され、長らく開催されていなかった。10月の終わり、やっと再開できることがきまり、そのはじめのイベントとして開催を許可されたのが「earth garden “秋” / re:LIVE 東京 fes」。
『もっと自由なオーガニックを』をテーマにしたコミュニティフェスとして、全体をアースガーデンがコーディネート。自然に根ざした60ほどのクラフト作家さんや、小さなブランド、個人店が集まってくれた。
「re:LIVE 東京 fes」と銘打ち、ロフトプロジェクトとLD&Kらと共に企画したライブステージは、配信も含めて、多くの人が参加。アースデイ東京と企画、運営したトークステージでも、濃いセッションが繰り広げられた。
「re:LIVE 東京 fes」トップバッターは「ユカリサ」。山崎ゆかり(空気公団)、吉野友加(tico moon)、中川理沙(ザ・なつやすみバンド)の3人は、今年の4月にアースデイ東京に出演予定だった。アースデイ東京が、オンライン開催になったことで、叶わなかった代々木公園への出演が、半年を経て実現。場を浄化するような繊細な音色が響き渡る。ステージの背後から、平和の象徴、鳩が羽ばき、フェスがスタートした。
お昼前にステージに登場したのは「佐藤タイジ」。代々木公園と佐藤タイジはよく合う。自由と希望を歌う彼と、代々木公園の野外ステージが持つメッセージが、同じ方向を向いているからではないだろうか。
「人類は、こういうのがないと無理なの!」
フェスに出演し、フェスを主宰し、フェスを愛する佐藤タイジの言葉は、まさしく僕たちの心を表している。
そして、我らが「加藤登紀子」の登場。佐藤タイジと2人で歌ったのは『Power to the people』だ。雲が切れ、太陽も力強く地面を照らす。彼女の小さい身体から放たれる無限大のパワーから、僕たちはいつだって勇気をもらっている。
ライブが一段落すると、トークゲストとして医師の「鎌田實」がステージへ。「今後、心配になるのは、人々のメンタルヘルス。コロナ鬱を防ぐ力が音楽にはある」と語ってくれた。そう、音楽が私達には必要なのだ。
昼をすぎると、マーケットエリアも賑わってきた。earrh garden の最大の魅力は、自然に根ざした多様な出店者のみなさんだ。一癖も二癖もある人々がつくるこだわりの品。社会課題の解決に向き合う小さなブランド。世界中を旅して集めた珍品名品。さまざまなブースが並ぶ。
earth garden “秋” のおなじみ企画、アウトドア界の人気者が出店するアウトドアギアのフリーマーケット「ギアループマーケット」も大人気。掘り出し物を狙う人たちが朝から列をなしていた。アウトドア好き同士が、ダラダラとしゃべる。お酒が入っていても、オープンエアーな環境なら、気兼ねなくずっと話していられる。
フジロックや朝霧JAMの名物出店「朝霧食堂」も人気だった。どちらも今年開催できなかったフェス。朝霧食堂のぐるぐるウインナーを食べずに年は越せないというフェス好きも多い。ブースの近くにいると「来年は苗場でみんなで乾杯したいね」なんて声が聞こえてきた。
昼過ぎにステージに登場したのは「かりゆし58」。暖かなアコースティックサウンドが会場内に響く。コロナの感染拡は「私達は、一つの地球に住んでいる」と実感する出来事でもあったと語ったボーカルの前川真悟さん。そのあと歌った『アナタが好きだ』にはこんな歌詞がある。
「何も言わなくても分かってる 人はみんな大変だ」
人によってさまざまな事情がある。いろんな価値観の人がいる。その複雑な時代を、複雑なまま受け入れる。そんな彼らの優しさが伝わる曲だった。
イベントも終盤に近づくころ、2日目のヘッドライナー「Salyu」がステージに上がった。ステージを見つめる観客も、2日間で最大だっただろう。しっとりと響く彼女の曲が、一人ひとりの心に届く。名曲「toU」のイントロが聞こえたとき、多くの観客が聞き入ろうと集中したことがわかった。涙ぐんでいる人も少ない。歌声を聞きながら、この曲は「再生」の曲なのではないかと思った。思えば、3.11のあと、一番はじめに聞きたくなったのは「toU」だった。
あのときと同じく、先行きが見えない状況だ。でも、ずっと絶望的なわけではない。希望は見えないかもしれない。見えないなら、見つける。誰かの「希望を見つける意思」こそが、希望なのだと思う。
ここから、代々木公園のイベントが再開する。さらにアースガーデンでは、11月にもうひとつフェスを主催する。
昨日と今日、代々木公園に集ってくれた全員と共有した希望は簡単には消えないはず。少しずつ、少しずつ、新しい時代に、共に進もう。そして、#ライブフォレストフェスで会おう!
写真:須古恵