今年とても話題になったネット上での炎上騒ぎだが、このとてもカワイイ笑顔の畠山千春(27歳)さんも炎上したうちの一人。
「うさぎはかわいい味がした。うさぎ狩りと解体してきたよ。」というブログに、ベジタリアンや、動物愛護精神を持つ人からの過激な書き込みが相次ぎ、さらにその書き込みを見た人が自分の考えを発信していくということがネット上で起きたのは今年の秋。この一連の流れを見た多くの人は「食べるってなんだろう」とか「生きてるってなんだろう」なんてところまで思いが及んだのではないだろうか。それは、私たちにとって必要な違和感だったのだと思う。
田舎での狩猟生活から見える、自分で作る暮らしの未来予想図
畠山千春
「きっかけは3.11。いつかは田舎で自給自足の暮らしって思っていたけど、あの大きい地震があったときに『いつ死ぬかわからない』って思ったんだよね。だからやるしかなかった。
私たちは、暮らしのいろんなことを人任せにしている。食べ物って自分の体を作る基本なのに、それも全部人任せ。それは、怖いなって。あの時に感じた強い気持ちが忘れられなくて、自分の暮らしを作っていこうって決意したんだ。」
これは現実であり、事実なんだよね。
彼女は福岡県糸島市で、猟師をしている。自ら罠をかけ、動物を殺し、肉を解体し、それを食べる。
誰もが「誰かがしていること」と分かっていながら、見て見ぬふりをし、社会からは巧妙に隠されているタブーともいうべき「屠殺」「食肉の解体」という部分に光を当てる。それと同時に、自らのブログでの情報発信や、ワークショップも開催している。
「ブログの書き込みには、命のことを軽く表現していて命に対して敬意がないっていうものも多い。でも、『食べること』と『殺す』ことって、同じことだと思うんだよね。表裏一体だから。
片方だけを切り取って、神聖にしなくてはいけないって言うこと自体に違和感がある。屠殺とか解体はもっと暮らしの中にあるものだし、誤解を恐れずに言えば、動物を殺して食べるということは日々の営みの中にある、もっと人間らしいことだと思うのね。
だから、写真にぼかしをいれたらどうかって言われたりするんだけど、あんまり隠すようなことはしたくなくて。こういう過程から目をそらさないで欲しいなって。」
ひどい中傷を受けようとも、それでもブログを書き続けるのは、実際にやってみる人が少しでもいいから増えていってほしいとの思いから。屠殺のHOW TOサイトなんて、今までなかっただろう。記事内に写真が多めなのも、実際にやるときに参考になるようにと、敢えてのこと。
自分が殺せるだけの肉を食べる
「かなりの肉食なんだろうって誤解されてると思うんだけど、今ほぼベジタリアンなんだよ。3−4時間くらいかけて、80kgのイノシシを解体した時、本当にクタクタになってしまって。その時、自分はそんなに肉をさばけないなって思った。それなら食べなくていいやって。
逆に言うとそれだけのエネルギーを消費するからこそ、肉が食べれるのであって、大して動かないのに高エネルギーなものを食べるのはちょっと、、、。それだったら、自分が殺せるだけの肉を食べるっていうのが、身の丈にあった食べ方だと思った。スーパーで売ってる家畜の肉を買って食べることは最近、全くしていない。」
今回の炎上では、屠殺の部分だけが広まってしまっていて、かなりの誤解を生んでいる。これは、とてももったいないことだ。彼女の暮らしはその全体がとても面白い。
家はシェアハウスで、住民は一人一芸を持っているそうだ。料理人や、写真家、着付けの先生、農業をしている子もいる。
家では頻繁にイベントが開催され、月に一度は家でマルシェをして、それぞれの出し物や料理で売上を作ったりしている。しかも驚くなかれ、月の食事代が5000円。調味料を含むほとんどの食品はオーガニックなもの。とても豊かな生活だ。
「月々の固定出費を減らすことで、これだけお金から自由になれるのかって実感したんだよね。週五日で働かなくても、お金がなくなったときは、最悪、近所のコンビニで何日か働けばなんとかなる。
これから先の未来は、私たちみたいな暮らしが多くなると思う。お金の価値が無くなったり、逆に言うとお金がなくても大丈夫な暮らしができるようになるんじゃないかな。お金がなければ自分で食べ物を作ったり、エネルギー作ったり、何よりも人とのコミュニケーションが大事になってきたり。
今までお金に集中していた価値が、人・モノ・お金に分散していくんじゃないかな。こういう暮らしをもっとみんながすればいいのにって心から思うんだよね。だから、沢山の人に実践してもらえるように楽しく伝えたい。 」
自分たちの食べているものがどこから来ているのかを体験するために、狩猟も田舎ぐらしもハードルが高いと思う人は、まずは屠畜場見学がオススメだそうだ。まずは、実践。そこから生まれる違和感が、次への行動につながっていくことを願って。
http://chiharuh.jp/