暮らしかた冒険家の伊藤菜衣子が語る「未来をつくることが最先端の社会運動!」

本紙ではおなじみ、これからの暮らしかたを探す「暮らしかた冒険家」伊藤さんが、坂本龍一さんに選ばれて札幌国際芸術祭に「暮らし」を出展!?

100万人のキャンドルナイトや、skmtsに関わってきた彼女に聞いた社会運動の未来予想図。

最先端の社会運動は「未来をつくる」こと
暮らしかた冒険家 伊藤菜衣子

世の中の評価を覆すから面白い

伊藤「札幌国際芸術祭では、築28年の中途半端な家をリノベして住むってプロジェクトを進行中です。もっとも価値がないと思われているものに息を吹き込むのがおもしろい。

熊本では古民家をセルフリノベーションしているけど、それは古民家がたくさんあって、誰も住まずにボロボロになって放置されていて、それには全く価値が無いと思われているから。逆に札幌では、古民家は希少価値。これは違うなと思って、住宅のシンクタンクで働くひとに聞いたら、これからは築30〜40年の家がゴロゴロ余るって聞いて。」

築30〜40年といえば、U-30世代の実家、もしくは祖父母の家などが当てはまる。アンティークになるにはまだ歴史が浅く、ちょっとバブルの匂いがして、確かにかっこ悪さが目立つ。

怒りや不満を、クリエイティブに乗り越えていく

最近の合言葉は「脱五郎」だそうだ。TVドラマ「北の国から」の主役、田中邦衛演じる「黒板五郎」のようなストイックさからは卒業するという意味(笑)

伊藤「私の根本にあるのは、嫌だなぁとか、だせーなーとか、ビミョーだなーということを、こうなったら面白いんじゃないかっていう仮説を立てて、やってみること。 熊本の町家はもちろん好きだけど、不便もある。

全ての不便さを受け入れるのは疲れるし、仕事もできなくなるし。不便さをどうやってかっこよく乗り越えていくかが大事なんだよね。夫も最初は『不便を楽しむ』って言ってたけど、町家2年目の時に『確かに楽しめないところもありますね』って降参したし。精神論で出来ることには限界があるし、広がらない。」

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度々出張するアメリカには、暮らしを冒険するヒントやアイデアがたくさん。この家もセルフビルドが素晴らしい。

もちろん、不便さをオール電化で乗り越えていくのもつまらない。サステナブルでオーガニックな新しいかっこよさがそこにはある。

最先端の社会運動は、見たい未来を作ることなのかもしれない

伊藤「今までたくさんの社会運動に関わってきたけど、それは『無力感』とずっと向き合ってきたとも言えるんだよね。もっとこうしたら伝わるんじゃないかって、仮説立てて、その都度やってきたけど、無力感ばかり。

去年末の衆議院議員総選挙では、坂本龍一さんと『政治家のみなさんへ』をやってみて、某代理店でこのView数を出すには2000万円かかるって言われたぐらいのことを、2週間でボランティアでやってみた。でも、結果は変わらなかった。その無力感は半端じゃなかったよ。

今まで出来ることは全部やったから、もうここじゃないんだなって気がして。 伝わりやすくするために簡単にしても、受け取る側の興味がないから伝わらない。それって、逆に自分のやりたいことの純度が下がるだけで。

それなら、やりたいことを一生懸命やるしかないって、一周回ってそこに来た。どうやってメッセージを伝えるか、ずっとずっと考えてきたけど、もうやーめた。 だから、今やってることが、私の中の最先端の社会運動なのかもしれない。」

ここから始めたリノベーション、、、すごい、、、

実際に見たい未来、見たい景色を作ること

伊藤「町家をリノベーションしたら、今まで否定的だった人の態度がコロっと変わったりもする。それは今までの広告では生み出せない変化だと思う。 伝えたいって思いは、おせっかい過ぎるかもって今は思う。相手が受け取る準備ができていなかったら、聞きたいって思ってもらえる状況にしなきゃだし、逆に言うと、聞きたいですって人に話したほうが1000倍くらい熱量上がるから、そういう状況をつくっていきたい。」

伊藤さんが考えた『お先に失礼します』というコピーが心に残っている。今は、国民総メディア時代だけど、僕たちはメディア過ぎるのではないだろうか。伝えることのその先に一人一人が歩き出すことで、新しい未来が待っているかも。

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