世間ではいわゆる「5月病」が流行する季節になってきました。多くの社会人が悩むこの時期、アースガーデンと第一次産業ネットが、自然とともに暮らす人々の生き方をお届けする特集の第二弾。今回は、元外資系ＭＲから世界一周バックパッカ―を経て、農業という新しい生き方に出会った方をご紹介します。

ドイツ・ベルリン生まれ。幼少期は東京都世田谷で多くの時間を過ごし、2008年に長野県佐久市で新規就農を果たした坂下理人さん。都会育ちで外資系企業勤めだった彼が、どのようにして「農業」と出会うことができたのか、お話を聞いてみました。

農業を考え始めたサラリーマン時代

「負けず嫌い」で何事にも挑戦したい性格の坂下さんは、初めての就職活動の際、キツイけれども成果がはっきりでる仕事を探し、最終的にＭＲ（Medical Representatives）職として外資系企業を選びました。しかし、3年勤めた後に退職をすることとなります。

坂下さん「仕事は充実していましたが、営業職は多忙な上に転勤や単身赴任が多く、家族と過ごす時間はほとんど持てません。帰らないマイホームを買う先輩達の姿を見て、次第に家族の在り方について考えるようになりました。家族と過ごす時間を作りたい、自然豊かな田舎で暮らしたいと考え、農業という選択肢を模索し始めました。」

世界一周バックパッカ―から就農

退職後はかねてからの夢であった世界一周旅行に出発した坂下さん。農業の世界に飛び込む「覚悟を決めるための旅」でもあったそうです。常に新しい生き方と向き合い続けたからこそ、今の仕事・場所にめぐり合うことができたと語ります。

坂下さん「研修先は世界一周旅行中にインターネットで探しました。ちなみに、最初に研修を受けた農業法人での受け入れが決まった時は、ヒマラヤ山脈の麓にあるネットカフェでした（笑）。インドでは『ガンジス川を最上流域に向かって旅をする』というのがテーマだったので、自然と山岳地域で過ごすことが多かったです。

長野を選んだのも、『山』というキーワードが自分の中にあったからです。山の人って寡黙なんですけど根はマジメな人が多くて、自分にとって心地良かったんです。開放的でないけど、仲良くなると懐に入れてくれる感じですかね。帰国後は、すぐに山梨の農業法人で研修が始まりました。ここでは7ヶ月間、ナスやホウレンソウなどの栽培方法を学びました。はじめて農業に触れて非常にワクワクしましたが、同時に体力が持たず身体がきつかったですね。」

持続可能な農業で独立へ

農業の入り口として自治体の制度を利用して農業研修に参加した坂下さん。この間に、坂下農園の特徴でもある「持続可能な農業」という考え方が生まれます。

坂下さん「山梨の研修を終了した後、長野県の里親制度を利用し、県内の農家の元で研修を受けました。（後に、この里親の紹介で農地を借りることができ、28歳の時に独立を果たします）このときに学んだトマト栽培の技術が今の坂下農園でも活きています。長野県は若い有機農家が多く、彼らの自然農法的な考え方に強く影響を受けました。リスク分散の意味で農薬を使用する部分もありますが、土地を疲弊させない特別栽培を基本としています。

長野には『美しい景観』があります。実は、農家は景観を維持するという重要なミッションを担っているんです。長野県らしい景色を次世代に残していきたいという気持ちが強いです。」

長野での暮らし

今はがむしゃらに農業一筋の坂下さんですが、家族と過ごす長野での時間には格別な思いがあるそうです。

坂下さん「0才と3才になる子供たちと遊ぶのが一番の息抜きになりますね。車で1時間ほど走れば10以上の温泉にいけてしまうので、休日は温泉巡りにハマっています。一歩外にでれば豊かな自然が広がっていますので、ただ散歩するだけでも楽しいですよ。ここらへんは、道端に道祖神（お地蔵さんのような石像）が点在しているので、散歩をするたびに新しい発見があります。

農業に興味をもつ方へメッセージ

未経験から農業という新しい世界に飛び込んだ坂下さんは、これから農業に挑戦しようとしている方々を応援しています。

坂下さん「とにかく、こちらに飛び込んできてみてください。農業を知るきっかけになれるなら、僕をうまく使っていただいても構いません。お金も減らないですし、リスクもないです。農業に興味がある方は、まず、自分に合うかどうか？向いているかどうか？を試してみることをオススメします。」

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