イギリスのクラシックなデザート、アップルクランブル。火が入って甘さを増した酸味のあるリンゴと、シナモンのスパイス、さくさくしたクランブルの食感がたまらない、イギリス料理の傑作です。
りんごは、私たちの生活の中でも最も身近なフルーツの1つではないでしょうか。そんなりんごの文化や歴史を世界からひもとくと、おもしろい話が出てきます。
年に一人あたり食べられているりんごは、日本では3.5kg(約11個)。ヨーロッパではなんと15kgと約4倍のりんごが食べられています。街中、小ぶりなりんごを片手に、表面を自分の服で軽く拭いて、皮ごとガリッ!…そんなシーンが想像つきますよね。そんなりんごを片手に皮ごとかじる、というシーンに憧れて現地で実践した人はいませんか?(わたしは若いころにやりました笑。)
そこで思ったのは、「…!すっばい!お世辞にも、あまりおいしくないかも…」ということ。日本のりんごに慣れ親しんできた私にとっては、酸っぱくてスカスカ、歯ごたえも悪い、、なんて思ってしまったのです。
日本では、そもそもフルーツは生で食べる文化であること、そして贈答用として改良されてきた背景があり、みずみずしくて甘い、蜜入りりんごが人気です。断面を切って蜜の多さをアピールした売られ方もされていますよね。
ところがその蜜入りりんごは、欧米では「ウォーターコア」と呼ばれ、病気として扱われてしまうそう。蜜が多いと、長期間の貯蔵がきかず、温度が上がったりすると蜜の部分が褐色化してしまうためだそう。日本のような蜜入りりんごも展開されようとしたようですが、市場としては受け入れられなかったようです。
そんな、酸っぱいことが当たり前である欧米のりんご。そんな中であるからこそ、育まれた食文化があります。そう、アメリカであればアップルパイや、イギリスであればアップルクランブル、フランスであればタルトタタン。酸っぱいりんごは、加熱をすることによって水分と酸味が飛んで甘味に変わり、またその酸味のバランスと相まってとってもおいしくなるのです。
日本の、蜜入りりんごはそのまま食べるのがやっぱりおいしい。だから、ここで紹介するアップルクランブルを作るときは、酸っぱいりんごを選ぶか、少し時間が経って食感が悪くなってしまったりんごの救済レシピとして、チャレンジしてみてください。
切ってから一口味見をして、んん、生食ではあんまりおいしくないな、なんて時でも、耐熱皿で15分で準備ができちゃう、そんなお手軽レシピです
通常は耐熱皿で作りますが、ここでは見た目も華やかに、リンゴを容器にし、まるごと焼いています。りんごは、味が締まるので、酸味の強い紅玉で作るのがおすすめです。
材料(2人分)
フィリング
りんご・・・・・・・・・・・・2個
砂糖・・・・・・・・・・・・・りんごの重量の1割
バター・・・・・・・・・・・・20g
シナモン・・・・・・・・・・小さじ1/2
クランブル
薄力粉・・・・・・・・・・・50g
砂糖・・・・・・・・・・・・・20g
バター・・・・・・・・・・・・25g
作りかた
1.【クランブルを作る】
ボウルに小さめのさいの目に切ったバター、小麦粉、砂糖を入れ(できればボウルごと冷やしておく)、バターを指先ですりつぶすようにして混ぜ、ぼろぼろの粗めのパン粉状態にする。
2.【フィリングを作る】
りんごの上1/4を横に切る(飾り切りはお好みで)。皮から0.5mm位の中身をスプーンなどでくり抜く。芯と種は取り除き、大きいものは小さく切る。砂糖、細かくしたバター、シナモンと混ぜ合わせ、くり抜いたりんごの容器に入れる。
3.【オーブンで焼く】
クッキングシートを敷いたトレーに、2.のリンゴを載せ、1.のクランブルをたっぷりのせる。りんごの上1/4も一緒に並べて、余熱した200°Cのオーブンで約20分、表面がこんがりするまで焼く。器に盛り、お好みでメープルシロップとローストくるみを散らす(分量外)。
※本場では、焼きたてを冷たいアイスクリームやカスタードクリームと一緒にいただきます。お好みでどうぞ。※お好みでフィリングにレーズンやナッツを加えても◎
耐熱皿を使う場合
くり抜くのがドキドキする、という方はもちろん切っても大丈夫。
耐熱皿にいちょう切りにしたりんごをひきつめて、クランブルを振りかけます。
そうしたら同じ時間オーブンで焼いたら完成です。
クランブルはたくさん作っても冷凍しておけるので、一度に作っておけば次の時がとっても楽です。特別感もあるので、来客時のもてなしにも。
アダムとイブの禁断の実とされているりんご、はたまたニュートンの「リンゴの木からリンゴが落ちるのを見て万有引力を思いついた」りんご。
子供たちとアップルクランブルを食べながら、りんごの歴史を紐解いてみるのも、おもしろいかもしれません。
きょうもいのちに感謝して。
いただきます。
奥はる奈
大学で国際関係学を学ぶ一方で、南海地震の減災活動、新潟中越地震支援を行い、スマトラ島沖地震では防災教育事業局長としてスリランカへ足を運ぶ。在学中、メキシコ留学や、アジア・中南米を中心に約35ヶ国をバックパッカーとして歴訪。多国籍料理を独自で学び、自宅で作れる懐石料理から中東料理まで、レパートリーは15カ国に及ぶ。卒業後、危機管理コンサルタントを経て、2014年ロンドン大学院で危機管理を専攻。現在は企業のブランディングコンサルタント兼フードデザイナーとして活動中。
「地のものを、地の水で」「キューバが好き」「一番好きなのは和食」