アースガーデンをはじめて25年。これまでにアースガーデンを通じて、たくさんの出会いがありました。アースガーデンを立ち上げたひとりで、今も現役スタッフである田川の心に残る出会いと、その感情の動きをつづるコラムです。
読んでくれたあなたが、ほっとするような時間を届けられたらいいなと思っています。
もう7,8年くらい前のことでしょうか。もっと前かな。。
アースガーデンで働きたいと連絡をくれた人と、面接したときのことです。その日オフィスはミーティングがあって、近所のスタバでお会いしました。
応募のメールでやる気を感じた35才くらいの独身の女性でした。今となっては印象的な会話しか覚えてないけれど、あの時のスタバの店内の雰囲気は妙によく覚えています。レジでのスタッフのオーダーの声や、お客さん同士の会話が店内でブルーグレーに広がる中、彼女の胸だけがどんどんピンクに染まっていくような体験でした。
実際お会いしてもいい感じの方で、面接のお話しでは、1ヶ月ほど前に社会人になって以来続けてきた仕事を退職されたこと、うちの職種に関心があること、年齢的にも本腰をいれてがんばりたいことなど、落ち着いてお話しいただきました。
ただ、、、なんだか聞いている私がもやもやする感じがしました。それが、言葉じりだったのか、表情だったのかは、はっきりしませんが、ともかく何か気になりました。
ご実家で暮らしているとのことで、ご家族のお話を伺いました。一人娘で、早期で仕事を引退されたご両親を、今後自分が働いて養いたいので、仕事もがんばるんだと責任感に溢れていました。
趣味の話しにも話題が広がって、とある手工芸もかなり経験を積まれていて、本当はもっとじっくりやってみたいと話されました。
そんな彼女のこれまでの暮らしぶりや、ご両親や趣味などについてお話しされる様子をじ〜っと伺っていて思いました。
それで、思ったことを言いました。こんな感じで。。。
「間違っていたらごめんなさい。面接に来ていただけたのはとっても有り難いのですが、本当に今、就職して、新しい仕事をはじめたいですか?
長年続けてきた仕事を考え抜いてやめられたのだろうから、そして、次の仕事も社員で働く気持ちなら、今この転換のタイミングで今まで我慢していたことをやったり、休みたかったり、したいことがあるんじゃないですか?」
そしたら、、、
急にうつむいて涙を流しはじめました。そのうち嗚咽がでてきて、ハンカチを取りだして、肩をふるわしてらっしゃいました。
そして、途切れ途切れで話しをしてくださいました。言い回しとかは、うる覚えなのだけど、内容はこういうことでした。
「次に働き出したら、年齢のこともあるし、必死で新しい仕事覚えて、定年まで働かないとという覚悟はあるんです。でも、ずっと働いてきて、趣味のことももっと時間割きたいし、何をやるかは決められないけど、自分の好きに過ごしてみたいんです。数か月だけでも。
自分でもそんな風に思っていることを、うっすら分かっていたかもしれないんですが、ありがとうございます。本当に、そうなんです」
しばらく、そのまま涙が止まりませんでした。
私は、彼女が自分の気持ちに気づけてよかったな〜と思いました。ただの彼女への優しさだけじゃなくて、うちのように小さいチームの会社でご一緒するには、その人にとっても、私たちにとっても、お互いにとって良いタイミングで、お互い相思相愛で仕事をしたいし、そうでないと、続きませんから。
またもや今回も長い長い面接で、2時間はお話してしまったと思います。
「本当にありがとうございました!」
と笑顔でいう彼女に、
「満足するまで休んで、それでもうちの仕事が気になったら、また連絡くださいね」
そう言って別れました。
その後連絡はありません。(うちの方も前からご一緒してきた女性が、さらに関わってもらう形で落ち着きました)
人と出会って繋がるのって、本当にご縁だな〜と思います。1人1人の自覚では選択でしかないのだろうけど、これだけたくさんの人がいるのにたまたま出会えるなんて、運ばれて出会えたとしか思えない。(おぉ、「運」は「はこぶ」ですものね〜)
いろんな人との出逢いがあって、困ったこともありました。ただ私個人としてはどの人との出逢いも、学びだな〜、経験させてもらっていると思っています。
彼女が今元気だといいな。
楽しく働いているといいな。
私は、これまでこんな風に贅沢とも言える面接ができているのだけど、大人数を面接する企業の人事の方は、会社にとって重要な仕事ですね。
理想と現実と情熱と効率とか叶うようなやり方を見出しているのかな。だとしたら、本当にすごいことです。
きっと中には、秘技を見出している人もいるはずです。それは、会社の幸せでもあるし、人の幸せにもつながることだなぁ。
そんな風に思います。
〜
彼女、元気だといいなぁ。
幸せだといいなぁ。
田川登美子