アースガーデンでかわいいワーゲンバスに釜をつんで、できたてのおいしいピザを提供してくれるUNCLE KEN。そのヒミツはオーナーの宮下健さんが自ら作る湘南藤沢小麦にある。
子どもたちが参加する畑
「学校の横にある畑で、自分たちが麦踏みをした麦を使ったパンを食べる。すごく贅沢な経験だと思いませんか?小学校の頃、麦踏みをした子どもが大きくなって、食べに来てくれることもありました。感無量です。」
現在、藤沢市内のすべての小学校給食で、湘南藤沢小麦を使ったパンが食べられている。畑の隣にある小学校では、子どもたちも畑の作業に参加しているそうだ。魚が切り身で泳いでいると思い込んでいる子どもがいるなんて話もあるが、小麦からパンまで体験できるこの取り組みはすばらしい。
「10年前にはじめた畑ですが、今では、20店舗以上の藤沢市内の飲食店が湘南藤沢小麦を使っています。それぞれのお店の人にも畑を手伝ってもらっているですよ。平日の定休日や、ランチ終わりの時間など、忙しい中でも時間を見つけてみんな来てくれます。お好み焼き屋さん、餃子屋さん、たい焼き屋さん、などどんどん用途も広がっていますね。」
自分たちで作った小麦だからこそ食材として自信がある。食材の成り立ちや安全性を説明ができるというのは、業務用の安い小麦にはない価値だ。食べてもらえれば違いも分かるはずという。
専業農家ではないからできる畑のあり方
湘南藤沢小麦が作られている畑は、JAを通じて借りた遊休農地。持ち主が農業を続けられなくなってしまった畑を使っている。
「小麦農家は、儲からないんだそうです。霜が降りる前から梅雨入り直前まで。1年の半分は小麦のために使うし、米農家のように保証もない。だから小麦農家は衰退してしまった、と。僕たちは、小麦を作って生計を立てていくわけではないからこそ、続けられています。」
小麦を育てていく中で“麦踏み”という工程がある。霜の影響で地面から浮いてしまった根っこを地面に戻すために、文字通り麦を踏みつける。これを小麦の成長に合わせて2回行う。小麦は病気にかかりやすいそうで、湘南藤沢小麦は減農薬で育てられている。雑草を殺すような農薬は使っていないので、育てるのには手間がかかる。
「6月の梅雨のころになると、黄金色に輝くじゅうたんが風になびき、とにかく美しい。ジブリの世界のようです。」
濡れてしまうと製粉の前に乾燥させねばならず、経費が余計にかかる。絶妙なタイミングを狙い収穫していくそうだ。
自分でやる
「ただ焼いてもつまらないじゃないですか。自分の力でどこまでできるか、というチャレンジです。今は小麦だけでなく、トマトやバジルも自分で作っています。農業のプロではないので甘いトマトは育ちませんが、それでいいんです。イタリアのトマトって酸っぱいので、素人が作るトマトがピザにマッチするんです。」
アンクルケンをはじめる前は、チェーン店のパン屋さんにいた。今思えば、言われたことをやるだけだったという。アンクルケンを立ち上げるときには、自己資金がたくさんあったわけでもなく、借りれる物件も限られている。それならいっそ、ケータリングカーで売れる場所に出向けばいいと考え方を切り替えた。
「結果的にはケータリングカーで良かったと思います。ひとつひとつ手作りのピザを、目の前のお客さんに提供することができますから。前に食べて美味しかったからと、リピーターさんまでいます。
仕事もなにもかもやめて、どうしようかと悩んだ時期もあったけど、家族には本当に感謝です。生活もなんとか成り立って、経験も積んできました。ケータリングカーの2台目も作成中です。」
今年の新しい取り組みとして、湘南にある唯一の蔵元の熊澤酒造と一緒に、湘南藤沢小麦を使ったビールを作ることも決まっている。様々な方向に広がる湘南藤沢小麦。アンクルケンは、アースガーデン夏に出店するので、ぜひピザを食べてみてほしい。
http://uncle-ken.com/