昨年のearthgaden“秋”で、オープン前からたくさんの人が行列をつくっているブースがありました。上質なベルギー産の国内染めリネンを使い、1年先も10年先もずっと大切にしたいと思えるように、と思いを込めて洋服作りに取り組んでいる「hitoharimama」です。
作り手のkanakoさんのこだわりで、インターネット販売はほぼせず、イベント出店や受注予約販売しています。Instagramには1万6千人を超えるフォロワーがいて、徳島を拠点にしながら、全国にファンがいます。今年もearth garden “秋” 2018に出店してくれるということでお話を聞かせてもらいました。
きっかけは子どもへの洋服作り
洋服作りのきっかけは、お子さんが着る洋服を、自分で作りたいという思いからだったそうです。
「子どもが生まれて、育児をしていく中で、子どもたちに洋服をつくってあげたいという気持ちが自然と芽生えてきました。それからミシンを買って、洋服の型紙をつくって。子どもたちに着せたいし、自分でも納得がいくデザインや材料を探しながら、趣味でやっていました」
体育大学に通うために上京し、日本に進出して8年目のスターバックスに新卒入社。洋服作りを習った経験はなく、独学でノウハウを身に着けたそうです。
スターバックスが教えてれた、心が通う接客
「振り返ってみると、スターバックスの仕事で得た喜びは、今の洋服作りに繋がっていると感じます。スターバックスが大事にしているパッションや、人のあたたかさを感じられる接客、自分がつくったものを召し上がっていただくこと、自分に会いに来てくれるような常連さんとのコミュニケーション。もちろん、社員としてのブランドを作っていく努力や、マネジメントのノウハウも今に活きています」
スターバックスで働いているときも、時間を見つけては洋服作りに取り組んでいたkanakoさん。そのうち、自分の家族だけでなく、周りの人に洋服を褒めてもらい「ほしい!」と連絡をもらうようになります。
「スターバックスで学んだことを活かして、新しい分野で一人で何かを築き上げたい気持ちが強くなっていきました。それなら、自分にしかできない洋服作りで、誰かを喜ばせたいなぁ…と」
代わりの効かない自分のものづくり
お話を伺っていると、自分にしかできないことはなんだろうと考え抜く、kanakoさんものづくりへの姿勢を感じ取ることができました。
「一つのモノができあがるまでのストーリーを大切にしたいんです。家の中に小さなアトリエをつくって、自分が着たいと思える洋服をデザインして、自分で縫って、フェイス・トゥ・フェイスでお渡しています」
kanakoさんは、インターネットを通じて誰でも何でも買える時代に、敢えて対面での販売にこだわります。
「インターネットを通じた販売はほとんどやってないんです。イベント出店でも、アトリエに遊びに来てもらうような気持ちでゆっくり洋服を見てほしいので、本当に恐縮なんですが、ブースに入れる人数を制限させていただいています。実際に見て、手にとってもらって、その時に本当に着たいと思ってもらえるなら、買ってもらえたらいいかなって。実際に会えば、一緒に色やサイズを選んだりもできますから」
ブースの飾り付けのために地元で買ったお花を持っていったり、地元の手作り菓子をお土産に渡したり、kanakoさんもお客さんも、わざわざそこに行くからできるコミュニケーションを大切にしています。
「Instagramのフォロワーさんは、洋服をつくっていく工程をずっと見守っていてくれているような方も多くて。ブースでお話していると『これはこういうふうに作られたんですよね?ずっと大事に着ますね』って声をかけてもらったりします。うれしいですね」
数量限定で、インターネット販売はほとんどしない。そのかわり、Instagramを使って、丁寧にコミュニケーションを取る。実際に会える場を大事にして、洋服を手から手に受け渡していく。効率は悪いけど、大量生産されている洋服とは明らかに違います。
「誰も代わりができない、私にしかできないことをこれからも続けていきたいです」と優しい声で、芯のある意志を伝えてくれました。
テクノロジーの進化で、誰でもできることはどんどん効率化されるでしょう。そんなとき大事なことは「私に立ち戻る」ことなのではないでしょうか。私にしかできないこと、あなたにしかできないこと。どんなことがあるでしょう?
https://www.instagram.com/hitoharimama/