「フェスティバルは非日常空間」だなんてよく言いますが、フェスティバルが仕事になると、それはもはや日常の景色。とは言え、飽きることなんか全くなくて、常にフェスティバルの場にいることは楽しいわけですが。
今回は、小さいお子さんと3人で様々なフェスティバルトリップを続けている「えりすけ」の金子洋典さん、恵理さん夫妻を取材しました。アースガーデンをはじめ、FUJI ROCK FESTIVAL、GO OUT JAMBOREE、VIVA LA ROCKなどでフェイスペイントや蝶ネクタイの店舗を展開。さらには、フェスティバルの運営スタッフやデコレーション、グラフィックデザインまで手がけています。そんな二人の人生に、フェスティバルはどんな影響を与えているのでしょうか?
恵理 フェスティバルは生活の一部です。仕事でもあるし、楽しみでもある。出店者は、来場者以上にフェスティバルを楽しんでいると思います。自分たちの店っていう居場所があって、出店者さんにも運営スタッフさんにも仲間がたくさんいる。家から遠く離れているのに「ご近所」みたいな感覚があります。
洋典 何もない土日は、どう過ごせばいいかわからないくらい日常です(笑)。僕は、平日はデザイナーとしての仕事をしていることが多く、基本的に家に篭って黙々と作業しています。月にいくつかフェスティバルの仕事を入れることで、デスクワークとのバランスをとっている。いい形で仕事ができていますね。
恵理 無意識に、何を買うにしても「これはフェスティバルで使えるかなぁ」と考えています。もはや、フェスティバルがない生活っていうのは、考えられないかなぁ。息子も本当に楽しそうです。自分が小さいころには想像できなかったような体験をたくさんしていて、正直、羨ましいです。
ーお子さんが生まれたばかりのころから出店していますが、現場にお子さんを連れてくることに抵抗はなかったんですか?
洋典 俺らのエゴなんじゃないかと考えたときもありました。
恵理 連れて行っても、私たちはかまってあげられないので、つまらないんじゃないかって。仕事の場だし、イベントのルールがあるから、息子を最優先にできない場面があります。
洋典 でも、それ以上になかなか味わえない経験のほうが価値があるんじゃないかって今は思っています。月に何回も、自然がたくさんあるところにいって、いろんな音楽が聞けて、いろんな大人に会えて、思いっきり遊べる。
恵理 子どもを連れてフェスティバルトリップしている出店者さんは意外と多くて、出店時には、他のファミリー出店者さんと協力して、子どもたちの面倒を見ていたりします。こういう協力体制があることがわかっているので、安心できます。
ーフェスティバルに家族で来ていることで、お子さんにいい影響があると感じることはありますか?
洋典 先輩のファミリー出店者さんの子どもたちを見ていると、活発で周りを笑顔にするパワフルさをもっている子たちが多いです。うちの息子も、あんな風に育っていってくれるといいなって想像しています。
恵理 いろんな場所に連れ出していたからか、保育園の同年代の子と比べてもとてもタフです。怖がったり躊躇したりせずに「できるよ!大丈夫だよ!」ってなんでもやっちゃう(笑)。
洋典 本人もとても楽しそうです。いろんな場所で、友達をつくって楽しく遊んでます。
恵理 いろんな人にかわいがってもらえる性格にも助けられています。とは言え、はじめてのフェスティバルは躊躇しちゃうかな。特にトイレ事情はすごく気になる。乳児はおむつすればいいけど、幼児は難しいです。最近のフェスティバルは「子ども優先トイレ」もあったりしますが、あれはかなり助かりますね。
洋典 保育園の先生には「フジロック行ってくる!」って元気に報告しているみたいです。どんなフェスでも「フジロック」って言ってるみたいだけど(笑)。
ー保育園でフェスティバルを計画中だそうですね。
洋典 そうなんですよ。フェスティバルに出店していると、衣食住、いろんな仲間ができます。来年くらいに、仲間を集めて、保育園でのフェスティバルが開催できるといいなと考えています。すでに、保育園の行事にフェスティバルのつながりを巻き込んだりもしています。例えば、保育園のBBQ大会には、顔なじみの出店仲間、無添加手造りの食肉加工屋さん「PURE HAM」から肉を仕入れました。「こんなに美味しいお肉、どこで買えるの?教えて!」って、沢山の人に聞かれたりして。
恵理 フェスティバルはとても素敵な場所です。来場者さんだけでなく、いろんな人に知ってもらいたい。フェスティバルが生活の一部に存在しているほうが、きっと人生が楽しいから。多くの人の日常がフェスティバルのように、色鮮やかなになるといいなって思っています。
洋典 本当に楽しいんですよ。車移動が多くて、おしりが痛いですけどね(笑)。来場者として見えている景色とは、また違ったフェスティバルが垣間見えたと思います。親子でフェスティバルトリップすることで、フェスティバルの価値や楽しさが、世代を超えて受け継がれていく。さらに、会場の外にフェスティバルの要素が広がり、空間の制限も無くなっていく。
フェスティバルと日常は、プツッと途切れたものではなく、緩やかに繋がっているのです。