日常を守りたいから政治を考える。311ネイティブな大学生のデモムーブメント「SASPL」

ただあるがままの世界ではなく、
あるべき世界を見よう。

THE FUTURE IS IN OUR HANDS.

2015年7月15日現在、彼らはSASPLの後継団体「SEALDs」として
様々なアクションを行っています。

SASPLは、Students Against Secret Protection Law(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)の頭文字。これまで4回のデモを主催し、またSASPLが作成した特定秘密保護法の何が問題なのかを訴えるYOUTUBEのムービーは、姿勢回数3万回を超える。今回は、SASPLで中心になって活動する明治学院大学3年生の奥田愛基くんに話を聞いてきた。

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社会に期待してない。だから、自分が何をするか

過去のデモの同調圧力には馴染めない

僕たちの日常を考えることと、社会を考えることは矛盾しない


社会に期待してない。だから、自分が何をするか

とんでもない大学生が現れたなぁと思ったよ。僕よりも遥かに勉強していて、モノをよく知っていて、ストリートカルチャーに根ざしたセンスの良さも持ち合わせていて。話についていけたのは大好きなHIPHOPの話ぐらい(笑) 恥ずかしい・・・

「僕は92年生まれなんですけど、考えてみたら産まれてからずっと『社会はどんどん大変になっていく』って聞かされて育ってきたように思うんです。バブル崩壊後で、生まれてすぐにオウム真理教の事件があって、若者のモラルハザードでとんでもないと言われてきた。さらに、僕らが大学に入る春に東日本大震災があって、入学は5月からでした。エネルギー問題も、超高齢化社会も、政治も、自分たち自身が特に何をしたわけでもないのに、僕たちはそうした問題の中にいる。

そんな社会で育ってきたから、社会に期待なんて最初からしてないんですよね。でも僕は、だからって冷笑的になるのではなく、自分がどうしたらいいのかってことをまじめに考えるしかないんだと思ってます。というか、冷笑とかしてる余裕がだんだん無くなってきてるし、する気分にもなれと思うんですよ。」

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生まれながらにITに親しんでいる世代をデジタルネイティブなんていうけど、奥田くんたちは311ネイティブと呼べるかもしれない。大学生という人生の中でも一番豊かな時間を、311と共に過ごす。そんな子たちがこれからどんどん社会に出てくるわけだ。

「学生だから出来る事もあると思うんですけど、僕もいつか大学を卒業するわけで(笑)就職したら社会のことを考えなくていいっていうのは通用しないんだと思います。ちょっとでもいいから、社会のことを考えたり、参加したりする事が当たり前になればいいですよね。社会の事を考えるのはめんどくさいですけど、人は1人で生きていく事なんてできないので、めんどくさい社会というものが、どうしても必要なんです。みんなが参加せずに社会が良くなればいいですけど、『全部任せてたらダメかもしれない』と気がついたのが311だったはず。

だからといっていきなりテンション上げて、極端に『革命家めざそうぜ』みたいになるんじゃなくて、日常の中で続けられるといいなって思います。いきなりは変われないので、地道にそういう文化を作るしかないですよね。過度な期待や絶望は止めて、冷静に、そして確実に、しぶとくやっていかなきゃ。まあだから、仕事しながら普通に政治について議論したり参加したりする人は、素直に『いいな』って思います(笑)カッコいい大人ってこういう事でしょ。みたいな。」

過去のデモの同調圧力には馴染めない

そんな奥田くんたちが作るデモは、自由だ。車の上から音楽を流し、誰かがiPhoneをみながら演説をすれば、誰かがコールをする。優れたビジュアルワークの横断幕やポップを持ち、渋谷を歩く。それはクラブで行うイベントのように煽り煽られ、自由に身体を揺らし、レスポンスを返し、怒り、共感し、叫ぶ。もちろん黙々と歩いていてもいい。軽い気持ちで参加してもいい。

「他のデモの同調圧力に疑問があるって言う人、周りにけっこういます。同じようにコールして、同じように行動して、同じ思想を持っていることになっていて。これはなんか行きにくいぞ、と。僕らのデモで語られる言葉は『私たちは』ではなく『私は』です。第2回の学生デモで象徴的なスピーチがあったんですけど

『作られた言葉ではなく、刷り込まれた意味でもなく、他人の声ではない私の意思を、私の言葉で、私の声で主張することにこそ、意味があると思っています。私は私の自由と権利を守るために、意思表示することを恥じません。そして、そのことこそが私の〈不断の努力〉であることを信じます』

っていう。これって、他の人がどうであれ、自分は声を上げるって話なんですよね。たとえ90%の人が特定秘密保護法に賛成しようとも、私は反対の声を上げるぞって。これに共感が生まれるんです。面白いですよね。だって『みんながこう思ってるぞ!』っていうのには違和感があるのに『俺はこう思ってるんだ!』っていうことに逆に共感する。もう『みんな』の話聞く事にうんざりしてるんじゃないですかね。『みんなの話は置いといて、あなたはどう思ってます?』これが聞きたいんですよ。

たしかに『憲法』とか『平和』を守れってのも大事なんですけど、そういう普遍的な話を個人的な話にまで持って来れるかどうかってのが一つ鍵かもしれませんね。このスピーチの『不断の努力』って言葉も多分憲法12条から来てるので、そういう普遍的な、だれが語っても同じ言葉を、自分の言葉として話すことが、結果的に同調圧力みたいなのを少なくしてるのかもしれませんね。」

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僕たちの日常を考えることと、社会を考えることは矛盾しない

「もっと日常の感覚を使っていいと思うんですよ。聞いている音楽とか、ほしいと思っているもの、これってかっこいいよねとか、これって憧れるよねって感覚をもっともっと使っていい。服とかステッカーとか、ビジュアルワークにこだわるのは、そういうことです。こういう事言うと『若者は資本主義に毒されて』とか言うめんどくさいおじさん達がいますが(笑)。そんな急に生活変われない訳ですよ。そんな事言ったって、誰だって、みんな服を着て、食べ物を食べて、何か買うわけですよね。なにかしら、自然と選ばされている訳ですよ。

だったらカッコいい方がいいじゃんっていう。どっちにしろフライヤー作るんならカッコいい方が良い。コレ多分新しい事でもなんでも無くて、昔から生活協同組合が「一般の物より健康で良い食品提供しましょう!!」みたいな感じでやってたと思うんですけどね。これも一緒にするなと怒られそう(笑)」

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「単純に自分たちの趣味的な所からアートワーク作っていますけど。YOUTUBEでCMを見たり、facebookでアピールのビジュアルワークを見たりして、同世代で、こんなことやってる人ってどんな人たちなんだろう?って話を聞きにきた人も結構いますR.ダールという政治学者が、現代では友達と遊びにいくおもしろさと投票に行くおもしろさが同じように比べられる、というようなことを言っていて、つまり、政治に参加する事って昔はそれだけで価値があるものだったのに、カラオケ行く位おもしろくないと誰も参加しようと思わなくなっている訳です。

憲法学者の木村草太さんなんかもポリタスに『どうしたら選挙はオムレツよりもおいしくなるか?』という題名で記事書いていましたけど、政治の事を少しでも関心が持てるようにこれからも伝える努力をしないといけないだと思います。そのために面白いことや楽しい事を知ってることも凄い重要。まぁ、僕らあんまりマジメじゃないから、ああいうありえないデモのフライヤーができたんだと思います(笑)。どんなフライヤーでも良いなら、伝わるものがいいじゃんって。」

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そうそう、そうなんだよね。かっこよくやればいい。伝わるようにやればいい。そうやってやるから、敏感なクリエイターが反応し、どんどん手伝ってくれる。その輪はびっくりするほど大きくなる。新しいデモクラシーがここにある。でも、奥田くんたちはこれをさらっとやってのける。

「若者は自分の日常にしか興味が無いから、政治に興味がないって言う人いますけど、僕らって多分、自分の日常を守りたいから、政治の事を考えようとしてると思うんです。というか、本来この二つって離れてるものじゃないと思うんですよ。だって僕らの日常の為に政治がある筈ですよね。色々クソみたいな事ありますけど、日常の中には楽しい事もあります。『絶望の国の幸福な若者たち』という本がありましたけど、どんな絶望的な状況の中でも僕たちの日常ってのがあると思うんですよね。

でも、話はそこで終わらなくて、だからってこのままで良い訳が無いし、ふざけんなって怒りがある。絶望な国で幸福な若者たちが、これ以上は許さないと、特定秘密保護法反対のために2000人集まることだってありえるんですよ。っていうか、ありえてるんですよね。結局これは僕たちの日常を守るためのアクションだし、だからこそ日常の感覚を持って訴えかけてます。実際、多分一番それが伝わるんだと思うんですよね。」

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日常の中に、黙ってられないことがたくさんあるのだ。黙っているのは楽だけど、そこに自分たちの幸せがないって分かっているのだ。だから、黙っていられない。白熱したインタビューの最後に「未来に希望を持っているかどうか」について聞いてみた。

「絶望する社会であっても、自分の幸せを見つけようとするだろうし、好きな人と結婚して、自分にも子どもができるかもしれない。問題は山積みなんだけど、生きていくしかない。どんな絶望的な社会であってもそうだと思いますよ。嫌な事もあって、楽しい事もあって。デモが必要な社会ってある意味、問題が山積みな社会ってことですから。単純に未来に希望が持てるかとか分かんないけど、僕は絶望的な世界でも希望を捨てない。ってことですね、たぶん。」

earth garden vol.27 掲載記事
Think Future Live Now.
http://www.earth-garden.jp/feature/fp27/