一人一人の選択に、小さなことの先に”希望”がある『スーパーローカルヒーロー』×『小さき声のカノン』(後半)

この対談が気づかせてくれるのは、幸せのあり方なのではないか。一人一人の小さな個人の選択の先に、様々な希望が待っている。それは、自分が選び取った現実を肯定して、希望を持って『生きる』ことができることでもある。全てが絶望なわけではないし、全てが希望なわけでもない。白と黒の間にあるレインボーを選べることが幸せなんだと思う。

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前半はこちら
http://www.earth-garden.jp/study/41635/

今回お話を聞いたのは、広島県尾道にあるちょっと変わったCD屋さん「れいこう堂」の店長 信恵さんの日常を追ったドキュメンタリー『スーパーローカルヒーロー』の田中トシノリ監督。も『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』など、核や被爆の問題を長年追い続け、最新作では福島、そしてチェルノブイリ後のベラルーシで生きるお母さんたちの思いを伝える『小さき声のカノン―選択する人々』の鎌仲ひとみ監督。そして、『小さき声のカノン』の音楽を担当するSHING02も少しばかり参加した三者対談。後半をご覧あれ。

『小さき声のカノン―選択する人々』は、3月7日(土)より渋谷・福島他全国順次公開。
『スーパーローカルヒーロー』は、3/21(土・祝)〜4/3(金)まで、新宿K’sシネマ他、全国順次公開

希望はここにある。

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田中 『小さき声のカノン』では、福島に残って今もいろんなことを考えながら、頑張っている人を描いていますよね。そこにこそあるんですよね、大事なことが。そういう人たちの存在って、みんな知らないんですよ。漠然と住んでいるか、逃げているか、その2つしかないと思っているんです。でも、そうじゃない、自分たちで考えながら住んでいる人たちがいるっていう。

©ぶんぶんフィルムズ
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鎌仲 福島県の外に避難できた人はすごく少ないし、放射性物質は福島の県境で止まったわけじゃない。それがいったいどのくらいのもんなのかという見解も、安全だということにはなっているけど、、っていう。そういう判断できない問題を抱えながら生きるっていうところに人間が追い込まれたときに、どうするのか。自分に置き換えてみると、とてもしんどいことなんだよね。だから、お母さんたちは、自分一人では出来ないから仲間を作らないといけないとか、それまでになかった選択肢を選ぶとか、いろんな壁があって。あれが引き起こしたことはなんだったのか、現在はどうなっているのか、そしてどう生きていこうとしているのかということを伝えなきゃと思って。

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SHING02 結論は、家族ごとにそれぞれ違うし、特に放射能の影響っていうのは、年令によってもぜんぜん違うじゃないですか。そこが判断を難しくさせますよね。夫婦が対等に話し合えるのかとか。そこもクローズアップされていますよね、この映画で。きちっと、話せるの?って。

鎌仲 どれだけ本質的なことを本音で話せる家族や仲間がいるか。逆に言うと、今まで家族でありながら、そういうことを話さないで、関係性を保つことができていたんだね

SHING02 それは理由がなんであれ、難しいですよ。

鎌仲 今回の出来事はそういう難しいことを多くの人に一斉に強いたんです。大丈夫だって言ってるんだから、大丈夫だろっていう、いつものパターンがうまく働かなかったんじゃないかな。

©ぶんぶんフィルムズ
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田中 すごくリアルなシーンがありますよね。撮影している方がお母さんと一緒にちゃんと話なよっていうシーンがあるじゃないですか?あそこは一番惹きつけられました。

鎌仲 そうそう、危険とか安全とかの議論じゃなくて。

田中 そこって一番惹きつけられるなって僕も思って。一番身近なというか、一番小さいところ。それは、家族のあり方ですね。そこには正しいとか、間違っているとかないんですよね。それぞれの家族が一番いい形を求めていくことが大事なのかな。

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鎌仲 そこで話し合いをして、お互い本音を出せるかどうかですよね。私の映画は3月7日に福島と東京で同時公開したんですが、福島の初日に来たお父さんが、ほんとうに辛いから聞いてほしいとやってきて。自分の妻と娘を避難させてるんだけど、もう4年経つ。そうすると、それぞれがそれぞれの土地の考え方に染まっていくから、同じ家族でありながら、心が離れていく状況をどうしようもできないと。自分は仕事がここにあるから行けないし、帰って来いともいえないって。危ないからって言われても、人はそんな簡単には動けないって現実がある。じゃあ、そんな中でどうしたらいいのか、そのセカンドベストを探さないといけない。何もサポートがない状態で、自分たちだけで何ができるっていう。そこが苦悩なんだよね。誰かに助けを求めても救済があるわけじゃない。自分たちでやるしかない。それは日本で平和に暮らしてきた普通の人達にとっては大変なことなんだよね。その大変さが、すべての日本人に起こりうるということを考えてもらいたいなと。自分だったらどうするのか。どんな苦難があって、自分と同じ普通の人が、問題を抱えて、救いのない状態で、どんな風になっているかというのは、きちんと伝わっていない。

田中 そんなとき、信恵さんのような小さい存在が、世の中は変えるんじゃないかと思うんです。僕は信恵さんを見ながらそう感じましたし、信恵さんを見た人が、どんどん行動をおこしていくことが大事なんじゃないかと。

鎌仲 そうですね。これもできるし、あれもできるし。福島に住んでいた普通のお母さんたちが、今回のようなことになったときに、何ができるかって。信恵さんを知った人がどんなことを始めるか。そういう一人一人が、自分に何ができるかってことを考える。人は人の生き方から多くのことを学ぶんです。絶望的な状況であっても、人はまだまだいろんなことができる。希望はここにあるんだよって。

『小さき声のカノン―選択する人々』は、3月7日(土)より渋谷・福島他全国順次公開。
『スーパーローカルヒーロー』は、3/21(土・祝)〜4/3(金)まで、新宿K’sシネマ他、全国順次公開

映画『 小さき声のカノン―選択する人々 / Little Voices from Fukushima 』

はじめはみんな、
泣き虫なフツーのお母さんだった。
『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』の
鎌仲ひとみ監督最新作!
福島、そしてチェルノブイリ後のベラルーシ。
お母さんたちは、“希望”を選択した。

東京電力福島原発事故から4年。事故による影響は安全である・危険であるといった議論からこぼれ落ちる声が存在している。それは不安な気持ちを抱えたお母さんたちの声だ。かつてチェルノブイリ原発事故を経験したベラルーシでは、子どもたちに何が起きたのか。お母さんたちはどうやって子どもを守ろうとしたのか?福島とチェルノブイリとの時間差は25年、今なおその影響が続いていることは、実は知られていない。日本のお母さんたちと同様、不安を抱いたお母さんたちが大きな声に流されることなく、直感にしたがって子どもたちを守る道を探し続けている。事故の衝撃に立ちすくみ、ただ困惑している時期は過ぎた。希望を具体的につくり出す新しいステージに今、私たちは立っている。迷いながらも日本のお母さんたちが自分たちの意志で動き始めた。そんなお母さんたちの小さな声が、国境を越えて響き始める。
http://kamanaka.com/canon/

映画『スーパーローカルヒーロー』

瀬戸内の街。荷台いっぱいで駆け回る、一台のオートバイ。
日に焼けた、どこかユーモラスなおじさんがつなぐ出会いと
“いま”を生きる背中が教えてくれるものは…。

あるライヴ映像から、この映画は始まる。ステージ上のミュージシャンが感謝の言葉とともに呼びかける、その名は「ノブエさん」。「ノブエさん」は「おじさん」である。西日本の小さな街広島県尾道市で、風変わりなCDショップ「れいこう堂」を営んでいる。身銭を切りながら多くのインディーズミュージシャンをライヴに呼び続けた、情熱の人。ノブエさんとれいこう堂に訪れた危機は、ミュージシャン達を突き動かす。インタビューと残されていた貴重な映像が、その時の空気を呼び起こしていく。 そして復活。「動かなければ何も伝わらない」「一人でもやる」。感じたら、とにかく行動するのだ。店はほったらかしで西へ東へ。子ども達のため、音楽のため、目の前の大切 なコトのために。走り回るノブエさんを気遣い、感化され、それぞれがまた彼の支えになる。その小さな力の集まりが、いくつもの無謀なチャレンジを成功させ てきた。音楽と人が、人と人が、型破りでどこまでも温かいノブエさんの“ライヴ”でつながり、弧を描き出すのだ。「このおじさんを知ってほしい」。撮り手である監督の素直な思いと視線は、ノブエさんを追いながら日本の今をも気負うことなく浮き彫りにする。そして本当のヒーローの居場所へと、観る者を導いていく。誰もが誰かのヒーローになれたなら…。一人のおじさんの記録が今、僕らの明日を予感させる物語になる。

http://superlocalhero.com/