「日本の海が大変なことになっている」「このままでは魚が危ない」――そんな話がよく聞かれるようになった今日このごろ。いったいそれって本当なのでしょうか。じつのところ、海はどうなってるの? 魚は食べられなくなるの? その答えを探しに、11月19日にファーマーズマーケットで行われたイベントに行ってきました。
「Story about Water」
アースガーデンフリーペーパー vol.39http://www.earth-garden.jp/feature/fp39
若手トップシェフによるサステナブルシーフード・を浸かった料理をフードトラックで
秋の終わりの日曜日、東京・青山の“ファーマーズマーケット@UNU”で、「サステナブルシーフード・キッチン」と名付けられたイベントが開催されました。イベントの主催は《Chefs for the Blue》、海の未来を考える若手トップシェフたちのグループです。イベントは二部で構成されていて、一部はなんと6人のシェフが3台の大型フードトラックを切り盛りするというもの。北参道の有名フレンチ「シンシア」の石井真介シェフのスペシャリテ、「シンシアの鯛焼き」や渋谷の人気フレンチ「モノリス」石井剛シェフの「ズワイガニとアボカドのブリオッシュサンド」をはじめ、フードトラックとはとても思えない豪華な内容の料理が提供され、会場はたくさんのお客で大賑いでした(早々に完売したそうです!)。
http://www.earth-garden.jp/study/58226/
そして第二部はいよいよ、マーケット奥にあるコミュニティスペースに場所を移してのトークセッション「サステナブルシーフードって何だ?」。《Chefs for the Blue》の世話人で、フードライターでもある佐々木ひろこさんをファシリテーター(進行役)に、「海の幸を未来に残す会」代表理事で土佐料理店オーナーの竹内太一さん、東京海洋大学准教授の勝川俊雄さん、そして前出「シンシア」シェフの石井真介さんの3人がトークを行いました。
本マグロは、本来の2.6%にまで激減
トークはまず、資源枯渇が叫ばれて久しいマグロの話からスタート。私達が“本マグロ”と呼んでいるマグロ、特に日本近海で獲れるそれは、正式には“太平洋クロマグロ”という種で、100年ほど前は浜から手漕ぎボートで漕ぎ出せる距離にふんだんに泳いでいた魚だそうです。それが長いあいだの乱獲、つまり獲りすぎによって現在なんと本来の2.6%(!)にまで激減。国際自然保護連合によって絶滅危惧種に制定されているのにも関わらず、今も産卵期(6~7月)に卵を抱えたお母さんマグロを日本漁船が大量に獲っているとのこと。なるほど、初夏にマグロ大安売りが多い理由を知って動揺しました。逆にアメリカの向こう側、大西洋に生きる“大西洋クロマグロ”は、漁獲規制を徹底するなどした結果大きく数が増えているとのことで、日本人が大好きなマグロの話なのにあまりに知られてないことばかりで驚きました。
2025年までに、ほぼ日本だけが大きく漁業成長率を落とす
続いてサバやカツオ、ホッケやヒラメなどの話題に移り、サステナブル(持続可能)で先進的な漁業で知られるノルウェーの事例や、震災後に放射能問題で漁獲が止まった三陸沖のヒラメが、その後急増した事例などをトピックに上げて次々とディスカッション。漁業は世界的には成長産業であって、海の再生機能を上手に働かせてあげる方法を考えるべきだ、とは勝川准教授の意見です。今後2025年までに、ほぼ日本だけが大きく漁業成長率を落とすことを予想した、世界銀行発表の数字を前にとても考えさせられました。
勝川准教授のデータに基づいた現状分析と、竹内さんの長年の仕入れ経験をベースにしたリアリティのあるお話、そして石井シェフの食の未来に向けた熱い思いが交互に紹介され、最後の質疑応答パートを含めて1時間半。あっという間に感じられた、学びの多いトークセッションでした。
欧米にはサステナブルシーフードの認証が広く認知されている
ではこの現状に対し、私たち消費者は何ができるのでしょうか。まだ豊富に残る魚種を可能な場面で選んで使えれば、枯渇しそうなシーフードを少しでも守ることができますよね。サステナブルシーフード(持続可能な漁業)の考えが進んだ欧米にはその指標として、”MSC“や”Seafood Watch”といった、サステナブルと認められた魚種に対する認証制度が広く認知されています。当日は時間切れで話せなかったそうですが、勝川准教授によると日本にも、比較的豊富に残る魚種を一覧にした“ブルーシーフードガイド”が存在しているそうです。ただ、まだまだ例示された魚種が少ないので使える場面が限られる。今後、こういったデータの拡充が望まれます。
>> http://sailorsforthesea.jp/blueseafood
「日本には、志の高い漁師さんもたくさんいて様々な取り組みをしていらっしゃいます。そういった方々を応援しながら、海の現状を少しでも多くの方に共有して考える機会を持っていただけば、社会の流れを変えられるかもと思い活動しています(佐々木さん)」――《Chefs for the Blue》は「まず知ることから」をスローガンに、今後もさまざまな活動をしていくそうです。同じテーマのトークセッションも順次計画中ということなので、機会があればぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
https://www.facebook.com/ChefsfortheBlue/
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アースガーデンフリーペーパー vol.39http://www.earth-garden.jp/feature/fp39